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2011年『12球団ペナントレース総括』 エースのお値段! 千葉ロッテ編

 成瀬善久(26)、26試合登板、10勝12敗。防御率3・27。2011年シーズンの推定年俸は1億3000万円−−。

 前年の勝ち星は13勝で、チーム最多。防御率は3・31だった。契約更改で1億円から「3000万円プラス」を勝ち取って、今季に臨んだ。勝ち星が3つ減ったのは大きなマイナス材料だが、1年間、ローテーションを守り抜いた。よって、今オフの契約更改は『現状維持』になるのではないだろうか。一般論として、球団は『彗星のごとく現れた20勝投手』よりも、『たとえ10勝10敗でも、4年、5年とローテーションを守り抜いた投手』の方が評価される。単年の好成績よりも『実績』…。その是非はともかく、これが日本式の査定である。

 プロ野球解説者の1人は悲観的な見方をしていた。
 「昨年はクライマックスシリーズ(以下=CS)、日本シリーズでの好投が評価されての『プラス査定』でした。今回は厳しくチェックされるでしょう。チームは最下位に沈み、フロントはチーム総年俸を落とす大義名分を得たようなものです」
 昨年12月15日の契約更改後の会見で、成瀬自身も『3000万円のプラス査定』に驚いており、「貯金が2個しかない(13勝11敗)。内容的にも、打たれて早い回に降板した試合がけっこうあった」と、反省の弁ばかり述べていた。それでも、球団が『プラス査定』を提示した理由は、主に2つ。CSでの好投、そして「エースとしての期待」である。

 だが、今季はその期待に応えられなかった試合もいくつか見られた。
 6月24日の対オリックス戦、成瀬は今季と最短となる5回で降板(同時点)。09年から続いていた対オリックス戦の連勝も「10」でストップした。こういう連勝記録はいずれ止まる。本拠地・QVCマリンでの試合ではあったが、この日は『風速10メートル強』の強風にさらされ、成瀬の生命線であるスライダーが決まらず、ストレートを狙い撃ちされた。また、成瀬の弱点といえば、『被本塁打の多さ』。08年=12本、09年=14本、10年=29本。11年の被本塁打は最終的に「15本」だが、4点を献上した5回表は後藤に2ランを浴びており、一気に敗戦ムードが漂っている。『弱点』を印象づける登板は、明らかに査定のマイナス材料だ。

 対戦チーム別の成績を見直してみると、今季は首位・ソフトバンク戦に4試合登板し、2勝2敗。2位・日本ハム戦が3勝1敗(5試合)、3位・西武戦が2勝2敗(6試合)、4位・オリックス戦が1勝1敗(2試合)、5位・楽天戦0勝3敗(4試合)。強力打線のソフトバンク、日本ハムに5割強の勝率を見せたのはさすがだが、下位チームに苦戦させられた。交流戦でも、最下位・横浜に0勝2敗(2試合)と負け越している。エースを登板させて下位チームに負けるのは、痛い…。千葉ロッテが最後まで浮上のきっかけを掴めなかったのは、成瀬の不振も大きい。

 成瀬の今季1勝目は4月19日の対西武戦。横浜高校時代の後輩でもある涌井との投げ合いを征したが(完封)、試合後、こう語っていた。
 「昼過ぎにはあまり投げたことがなかった。いい勉強になった」
 エースは3連戦の初戦を託される。火曜日か、金曜日だ。つまり、大半が『ナイター』となる。しかし、今年は震災の影響でデーゲームに変更された試合も多く、同日も『平日のゲーデーム』だった。QVCマリンは風の強い球場でもある。当日は突風も激しかったが、どうも、昼間と夜間とでは風の吹く方向や質感が異なるという。中盤戦以降は連戦に次ぐ連戦…。今季は統一球による打撃陣の不振ばかりがクローズアップされたが、成瀬以外にも変則日程に苦しんだ投手がいたのではないだろうか。

 10勝目を挙げたのは、8月30日。9月以降、1勝も挙げていないのだ。
 7月8日、ソフトバンク打線から完封勝利(6勝目)を奪ったとき、緩急とバツグンのコントロールが光った。これに対し、10勝目の日本ハム戦は139球中74球がストレートだった。力で押したのではなく、相手打者の裏をかき、コーナーギリギリのところでストライクカウントを稼いだのだ。『技巧派』という点では同じだが、7月8日のソフトバンク戦のウイニングショットはスライダー、カーブで、8月30日はストレートだった。相手打線に応じ、決め球を変える適応能力の高さは一流だ。「負け数が多い」と切り捨てられるか、それとも、「味方打線の援護に恵まれなかった」と判断されるか…。成瀬は契約更改の席で厳しい言葉をぶつけられるかもしれない。(スポーツライター・飯山満)

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