文句なしの仕上がりだ。「先週びっしりやって気合が乗ってきた。今週は単走でやれば十分。」と河内師はうなずいた。あせらず、じっくり、大切に育てたニシノマナムスメがついに開花の時を迎えようとしている。
前走のマイラーズCは2着。安田記念でも有力馬になるカンパニーをクビ差まで追い詰めた。牡馬相手の好走に自信は深まったが、当日は良馬場発表とはいえ、いくらか緩い馬場。軽い切れ味が武器のマナムスメには不向きな状態だった。
「馬場が良ければもっと切れていた」と牡馬一線級にも負けない地力を感じ取っている。
3歳の春にも桜花賞候補に挙げられたほど。父アグネスタキオン、母はニシノフラワー。どちらも河内師が騎手時代に手綱を取り、GIホースに導いた。素質は折り紙つきだったが、当時は線が細く調教で強い負荷をかけると食欲が落ちるデリケートさが残っていた。
しかし、今は違う。「古馬になってカイバをしっかり食べるようになった。だから思い通りに調整できる」
もともとが5月30日の遅生まれということもあり、最近の成長は目覚しい。馬体重こそ変わらないが、腹回り、特に胸前の筋肉の発達は素晴らしい。
「中間はビシビシやれている。馬がすっかり戦闘モードだよ」と宮坂厩務員。母譲りの繊細な気性がネックにもなる難しい血統だが、兄のニシノデューも手掛けた腕利きはすべてを知り尽くしている。
最大のライバル・ウオッカは海外遠征帰りだ。何の不安もなく仕上がった今のマナムスメなら、ダービー馬にも臆することはない。
「切れ味勝負の馬だから台風の動向が気になるけど、良馬場ならいいレースになる。ジョッキーも2度目だしね」。河内師はその手腕を見込んでいる吉田隼に期待をこめた。
【最終追いVTR】牝馬らしい軽めの調整で最後まで追われずじまい。静の調教となったが、最後はハミを取って好気合をアピール。馬体の張りも目立っている。