トンネルに入った瞬間からどろりとゼリーに包まれてしまったような感覚に陥り、息苦しく、体は次第にどっと重たくなり、前に進めなくなってきてしまったらしい。
その場には無数の怨念が広がっていて、動物霊と人間霊が溶け合わさって、地獄絵図のようであった。
「いるか?いないか?とかではなく“い過ぎ”ですよ。着いた瞬間からやばいな〜と思ってたけど、あそこは本当にきつかった」と語る荼羅尼女史。
御祓(おはら)いなんかしたら、こちらが憑り殺されると思った荼羅尼女史は結界を張り、この場が少しでもきれいな和らいだ空間になるように祝詞と奏上をあげ、その場を後にしたという。
ここHトンネルは地元の人や心霊マニアの間で、有名な心霊スポットになっているのである。犬のような格好で追いかけてくる婆や、母子の幽霊、そしてトンネルの天井に苦悶の表情を浮かべた無数の顔が滲み出ているなど多くの噂が絶えない場所だ。
このトンネルは人面犬が現れると都市伝説でウワサされている場所である。ここで、犬の霊と人の霊が混合した結果生まれたのが人面犬という事になるのだろうか…。
最近、身近にあった珍事件ともいえる怨霊事件のこともうかがった。ある日、夜になると寝苦しくて眠れないという女性からの相談で、荼羅尼女史は霊視を開始。すると、男の霊が代わる代わる寝ている女性に覆いかぶさる姿が見えたという。
「こんなに乗っかられていたら、そりゃ苦しいわよね」と眠れない理由は分かったが、しかしなぜ、これほど次々と男の霊が彼女に覆いかぶさっていくのか。
真意を確かめるべく霊視を続けると驚愕の事実が発覚した。
「びっくりしました。彼女の部屋の前で老婆が勝手に客引きをし、次々と男の霊達を部屋に招き入れているのだもの」
霊界にもそんな商売があるとは!この女性は美人だったらしく、いつの頃からか老婆の霊に目をつけられていたのだ。勝手に部屋の前で開店させられていたとは、相談者の女性も気持ちが悪いだろう。荼羅尼女史はこの老婆を撃退するべく、ヒトガタを使い、「そこじゃないよ、こっちだよ」と本来の部屋の前から老婆を誘導し、架空のもう1つの部屋へ永遠に老婆を封じ込めたのである。
荼羅尼女史の体を張った怨霊達との戦いは日夜続く。笑顔を絶やさない懐深い情を持つ彼女が放つ空気は、話の内容とは裏腹に、存在だけでその場をまろやかにしてくれるのを感じ取れる今回の取材であった。