「首なしライダー」は昭和末期の頃に流行り始めた幽霊談で、その名のとおり首のないバイク乗りが深夜の街中を爆走しているという話である。
出現地は日本全国に渡り、群馬県の棒名町近辺、埼玉県は秩父市近辺、東京都青梅市のほか京都や兵庫県の六甲山付近にも目撃情報がある。
首なしライダーの正体はとある暴走族のひとりの生霊であるとされている。誕生の経緯としてもっとも知られているのが、とある街で暴走族の違法行為に困り果てた住民が彼らを懲らしめようと思い、通り道にピアノ線を仕掛けたところ見事にかかり首がすっ飛んでしまったという話である。
これらはほぼ実話であり、1984年東京都葛飾区の水元公園でバイク乗りの少年が何者かが仕掛けたロープに首を引っ掛けて転倒し亡くなった事件があった。
ロープは近隣の住人が仕掛けたものと言われているが、具体的な犯人は不明なままとなっている。実際に道にロープを仕掛けるというトラップは当時の暴走族対策によく用いられた作戦であり、一説にはこの事件がきっかけで暴走族の抑止に効果があったとされている。
さて日本には江戸時代より「首なしの霊」が出るという怪談話は残っており、多くは馬に乗った首なしの武士が夜な夜な現れ、人々を驚かすといった伝承のほか、世界には「デュラハン」というアイルランドに伝わる首なし騎士の伝説が残っている。
このように首なしライダーをはじめとする「首のない幽霊たち」は過去から現在にかけて世界中で現れているのだ。
通常、首から上の頭がなければ生物は呼吸ができずに死に至る。頭がないのは死者の証であり、生物を確実に死に至らしめる処刑法でもある。
しかし、そんな常識を覆す事件が今から70年前のアメリカで発生していた。
右の画像は「首なしニワトリ」の写真である。実はこのニワトリ、首のないまま生きているのだ。
ニワトリの名は「マイク」といい、食肉にされるため首をはねたのだが、首をはねても死なずになんと1年以上、18か月も生き続けたのだ。
マイクが死ななかった理由としては首を落とした際、頚動脈が凝固した血液でふさがれ、脳の一部が残っていたため死なずに済んだとの研究結果が出された。
水や食事はスポイトで喉に直接流し込み、生きている分にはまったく不自由しなかったという。それどころか、マイクは食欲旺盛で亡くなるまで太り続けた。
結果、マイクは喉に食べ物がつまり事故死してしまうのだが、健康上に問題は見当たらず事故さえなければさらに長生きした可能性もあったという。
ニワトリは生命力が強く首をはねても数時間は生き続けるとされており、一概には言えないが、人間でもタイミングによっては生き続けてしまう可能性はある(実際、ギロチン処刑の実験では数秒〜数分間ではあるが意識が残っているという)。
首なしライダーをはじめとする「首なし伝説」は非常にリアリティのある怪談話でもあるのだ。文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)