「努力してTOEICのスコアを上げて、英会話スキルもアップしたのに、海外のクライアントとの折衝がどうもうまくいかない」とこぼすビジネスマンも少なくないと聞く。そもそも外国人コンプレックスもあるだろう。ただ、日本の島国で生まれ育った多くのビジネスマンには、彼らの思考の特性を理解し、我々との違いを明確にする必要がある。そうすれば、より良いコミュニケーションを取ることができるはずだ。
ここでは、かつて外資系企業で働く日本人向けに展開されていたが、最近では一般企業に勤務する日本人も学ぶことが増えてきた「異文化コミュニケーション」研修の基本的な内容をピックアップしてみたい。
異文化コミュニケーションにはコアとなる2つの軸がある。
まず一つ目は「結論を先に伝える」ことである。「結論」を言うタイミングが日本人と外国人で異なるのは、英語と日本語の文章構造の違いがあるためだと言われている。日本語は「主語・目的語・述語」の文章構造にすることが多い上に、四コママンガなどでなじみ深い“起承転結“がアタマに入っている。話し始めると、理由、根拠を述べてから、最後に結論を持っていく場合が多い。
一方、英語は「主語・述語・目的語」の構成となっている上に、学校で早くからプレゼンテーションの授業があり、結論を先に伝えることが当たり前になっている。結論を述べた上で、その論拠を説明していくスタイル。直感で理解しやすいのだ。
理由を先に話すと、そのスタイルに慣れていない外国人にとってはまどろっこしく、何を伝えたいのか分からないことも多々あるようだ。「結論から理由」を心がけるようにしたい。
もう一つは「ハッキリと物事を伝える」こと。日本人には「ハイコンテクスト文化」、外国人は「ローコンテクスト文化」をそれぞれ持つという。
日本は単一人種だ。"ハッキリと言わなくても雰囲気で通じ合う"ことができるのである。いわゆる“空気を読む“ことに長けているのだ。これを「ハイコンテクスト文化」と言う。言葉で伝えなくても、文脈や背景などを加味してコミュニケーションを取る文化があるのだ。
一方アメリカ、ヨーロッパ諸国など多人種で形成されている国は、”伝えたいことはハッキリ”言葉にしないと、理解してもらえないのである。これを「ローコンテクスト文化」といい、言葉によってダイレクトにコミュニケーションを取っていく。
学者エドワード・ホールの著書『ビヨンドカルチャー』によると、日本は世界でもトップの“ハイコンテクスト“な国。ハッキリと、ダイレクトに言葉にしない傾向が顕著なのだ。移民も多く、多宗教、多文化が交わる国では、決して空気などは読んでくれない。日本人同士であれば「失礼」と思われるくらいのダイレクトな物言いでちょうどいいと言われているのだ。
これらの2点を注意するだけで、外国人とのコミュニケーションはだいぶ円滑になろう。そうなれば苦手意識も徐々に薄れていき、グローバル化の波に乗り遅れることもなくなるのでは。ぜひ実践してほしい。
文 / 萩原 孝弘