「矢野サン、大丈夫ッスよね!?」
報道陣に逆取材する阪神ナインもいたほどだ。何が大丈夫なのか? 再発した右ヒジ痛の状況については、球団も詳しくは伝えていない。内情は阪神選手の方が知っていそうなものだが、彼らが心配しているのは『矢野の去就』だった。
「赤星(憲広)サンの一件もありますからね。そもそも、赤星サンは最初から引退を申し出たわけではないんです。『脊椎損傷』を治すため、リハビリの時間をもらえないかと申し出たんですが、球団が受け入れなかったんです。矢野サンの右ヒジ痛も長引くようなら…」(関係者の1人)
昨年オフ、主力選手の多くが契約更改を保留し、意見衝突したのはそういった背景もあったという。球団にすれば、12球団トップにまで膨れ上がった参稼報酬(選手総年俸)を減らすための苦渋の選択だったが、選手たちは納得がいかなかったのだ。
また同日、甲子園にいた報道陣も、『矢野の去就』を気に止めている。
遠回しに本人に聞いてみたところ、「たとえば今が9月だったら決心せなあかんけど、まだ6月やないか!?」と、「このまま引退」という推測を強く否定していた。その言葉通りになってもらいたい…。しかし、矢野の二軍調整の申し出はタイミングが悪すぎた。
「6月3日、狩野(恵輔)を一軍登録から抹消しています。9日に小宮山慎二を登録しましたが、昨季まで一軍でマスクを被った経験のない捕手ですからね。城島(健司)に何かあった場合、試合に影響します」(前出・関係者)
野球協約によれば、一軍登録を抹消された選手は『10日間』、再登録できない決まりになっている。27歳の狩野は、昨季、矢野の故障離脱を受け、115試合のスタメンマスクを任された。矢野、城島の域には到達していないが、「小宮山よりも狩野」というのが、現在の評価である。
「矢野は数日前から痛みがあったと話していますが、本当は隠していたんじゃないかな。狩野の二軍落ちが決まり、自身と城島の2人しか捕手が一軍登録されていない状況になったので、無理をしたんだと思う。でも、このまま隠し通しても、右ヒジ痛でまともに動けないと判断し、自ら二軍調整を申し出たんでしょう」(別のチーム関係者)
言い方を換えれば、狩野の再登録がOKになる「あと数日間」が我慢できなかったのだから、右ヒジ痛は重傷なのではないだろうか。
「一時期、狩野は金本(知憲)のスタメン落ちで、先発左翼の大抜擢を受けました。打撃を変われてのコンバートでしたか、不慣れな外野守備のおかげで打撃にも影響が出てしまいました」(同)
こうした選手抜擢の悪循環は、交流戦後の戦況にも影を落としそうである。
阪神は巨人追撃の一番手と目されていたが、ベンチのムードは決して良くない。今季は球団創立75周年だが、苦しい戦いが続いている。精神的支柱・矢野に対する「早く帰ってきてくれ!」の声は、切実な思いも込められているようだ。