2勝、13イニング連続の“ゼロ行進”である。
勝因は“オリンピック”ではないだろうか。
「良い意味で、いつもの千賀ではありませんでした」(チーム関係者)
初回のマウンドに上がった時、千賀は違和感を覚えたという。
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メットライフドームは埼玉西武の本拠地だが、球場の特徴は知り尽くしている。しかし、同球場の登板は昨年10月6日以来となる。バックネット後方の観客席が視界に入ってきて、別球場に来たような印象を抱いた。
「今年の開幕前、メットライフドームの一部改修工事が終わりました。その影響でしょう」(前出・同)
また、これは“感性”だが、同球場のマウンドを指して、「他球場よりも低く感じる」「傾斜が緩い」と話すパ・リーグ投手も少なくない。
千賀は改修されたメットライフドームでの登板は初めてであり、「低いマウンド」に違和感を覚えた。しかし、その違和感が千賀を慎重にさせ、力勝負に出なかったことが勝因につながった。
「オリンピックや国際試合は対戦するバッターは初見、選ばれた日本のピッチャーたちはみんな慎重になります。その慎重さをプラスに転じることができるのが、千賀の強みです」
チーム関係者の多くがそう話していた。
マウンドが低く感じるということは、落差の大きい“お化けフォーク”の威力が半減してしまう。配球を組み換えて対処できる部分もあれば、もう一つの武器である直球が生命線となる。直球中心のピッチングで強力な西武打線を抑えたのだから、千賀の復活はホンモノと言っていいだろう。
「4番・中村剛也に対し、内角球を投げ込んでいました。3度の対決で3三振。慎重で、でも、大胆に攻めなければならないところはしっかりと攻めていました。ボールにも力がありました」(プロ野球解説者)
慎重になりすぎて、弱気のピッチングをすると痛い目に遭う。大胆に攻める度胸も国際試合で培った精神力によるものだろう。
前出のチーム関係者によれば、前半戦を棒に振ったため、千賀の周りには五輪辞退を促す声も出ていたという。最後は本人の「出たい」とする意思が尊重されたが、
「大舞台で恥を掻きたくないとする千賀の気持ちが復調のきっかけになるのではないか」と、期待もされていたそうだ。
千賀の復活でソフトバンクも首位争いに加わってくるかもしれない。
そう言えば、千賀復活の翌日の8月26日、巨人は菅野智之の先発を発表した。こちらもエース復活となれば良いのだが…。
千賀がオリンピックにこだわったのは、やはりメジャーリーグ挑戦の夢を諦め切れないからだろうか。今の千賀なら、間違いなく通用する。(スポーツライター・飯山満)