星野監督が下柳獲得を狙っているのは、“本人の証言”から分かった。下柳が関西のローカルTV局のニュース番組に出演し、「キャンプに来てみないかという話はいただきました」と、コメントしたのである(10月31日)。野球協約では、12球団トライアウトの実施前に個別の交渉はできないことになっている。それを受け、楽天側は協約を遵守する旨を慌てて伝えたが…。ライバル球団の関係者は、下柳獲得を狙う一連の発言について首を傾げていた。
「今オフ、注目すべき左腕はソフトバンクの杉内(俊哉=31)、海外FA権を取得した和田(毅=30)の2人でしょう。日本シリーズが控えているから何とも言えないが、国内FA権を取得した杉内は『生涯ホークス』とはまだ正式に表明していません。和田だって、メジャーとの交渉が失敗した場合は…」
このFA権を取得した両左腕の去就は、今季序盤戦から注目されていた。一部報道では「杉内は権利行使する」と“断定形”で報じられていたが…。
しかし、働き盛りの2人のハートを射止めるには『それなりの軍資金』が必要となる。杉内の推定奔放は3億5000万円。この時点では憶測の域を出ないが、「3年12億円がスタートラインとなる」とも予想されている。3億3000万円の和田にしても、同額の獲得資金が必要となる。それに対し、推定9000万円の下柳は「現役を続けたい」との思いが強く、一般論として、年俸額にはこだわらないはずだ。つまり、杉内、和田よりも先に下柳に触手を伸ばしたということは、「楽天は大型補強の軍資金を用意していない」のではないだろうか。
「山崎武司を切って、下柳? 世代交代を進めるはずなのに矛盾していますね。下柳は練習熱心ですし、阪神の若手も尊敬の眼差しで見ていましたが…」(プロ野球解説者)
また、今オフは米FA市場もビッグネームが少なく、帰還の可能性が高い日本人メジャーリーガーにしても、福留孝介はインディアンズ残留か中日帰還、黒田にしても「日本に帰るなら広島」と明言している。あとは、井川慶、五十嵐亮太などだ。エース・岩隈久志の米挑戦は規制路線であり、昨年オフのポスティング失敗によって『落札金』を入手できなかった。トレードなどの補強が本格化するのはこれからだが、やはり、星野監督は大型補強の軍資金を持っていないのではないだろうか。
「下柳は阪神時代に星野監督が呼び寄せた投手です。下柳に完全燃焼できる環境を与えようという親心かもしれません」(選出・同)
楽天フロントが『お得意の費用対効果』で、星野監督を説き伏せたのかもしれない。オフの主役と言えば、補強に長けた星野監督だった。中途半端な補強で終わるくらいなら、自前戦力の底上げに専念すべきだろう。