ディフェンディング王者とIWGP王者がそろって敗れる波乱の幕開けの中、ノアの看板を背負ってG1初参戦を果たした杉浦も天山広吉相手に黒星スタート。右膝蜂窩織炎(ほうかしきえん)の負傷明けとあって、厳しい初戦を強いられた。
投げ放しジャーマンにランニングニーで出バナをくじいたものの、いずれも踏ん張りが利かないのか、普段の破壊力はない。逆にモンゴリアンチョップからバックドロップを食らってピンチ。ダイビングヘッドバットこそ間一髪で交わすも、その後アナコンダバイスで捕獲されて万事休す。
無念のタップアウト負けでG1初勝利はお預け。故・三沢光晴さんが亡くなった広島の地で捧ぐ勝利は挙げられず、試合後はノーコメントで控え室に戻ったが、実は杉浦にとってはここから逆襲Vを図り、G1制覇後に描いている青写真があるのだ。
「どんな形であれ賞金1000万はオレが頂く。800万は家のローンを返して、残り200万を持って六本木で豪遊しようかと思ってたけど、プライベートじゃなくてノアのために使う。前社長(故・三沢さん)は会社の反映とノアを良くすることを願ってたから…」
なんと杉浦は激動のノアを支えるため、ぜがひでもここから巻き返して賞金1000万を手にしようというのだ。しかし、よくよく聞いてみると、ちょっと話が違うようで「優勝しても会社に渡すのは20万の予定だったんだけど、俺を取締役にしてくれんならそこそこ金を用意しても良いと思ってんだわ」。どうやら1000万をチラつかせ、ノアの要職に就こうという魂胆なのだ。
「オレは物言う取締役になるよ。なんなら代取(代表取締役)狙っちゃおうかな」。真夏の最強王者となって田上政権入閣はおろか、方舟マットでの成り上がりを目論む杉浦のG1はまだ始まったばかりだ。
◎TAJIRI 毒霧○
Aブロックではそのほか他団体選手がそろって勝利。まずは新日所属の外国人レスラーのジャイアント・バーナードと対戦したTAJIRIが白星発進だ。大会前には毒霧禁止に調印していたが、終盤にタイガー服部レフェリーの死角で噴射。そのまま目が開かないバーナードにトラースキック4連発で畳み掛けて3カウントをかっさらった。
禁止事項だったはずの毒霧。TAJIRIは「レフェリーに見られなきゃ良い」と悪びれることなく微笑を浮かべた。また、ZERO1から参戦している田中将斗は矢野通を破って白星スタート。鬼殺しに悶絶しかけるも、こん身のスライディングDを連発して勝負を決め「あくまで他団体選手初のG1優勝や。火祭り刀も持って来てやる」と言い放っていた。
◎棚橋 100年に1度の負け
大波乱の幕開けだ。Aブロック公式戦では外敵戦士がそろって初陣を飾り、IWGPヘビー級王者の棚橋弘至が大森隆男に敗れる大番狂わせが起きた。必殺ハイフライフローで試合を決めにかかろうとコーナーに駆け上がったところ、アックスボンバーで追撃されて悶絶。そのままアックスギロチンでマットに叩きつけられ、まさかの3カウントを献上した。
それでも試合後は「きょうは100年に1度の負け。足元をすくわれても上しか見ない。必ず優勝します」と気持ちを切り替えていた。