中で、こと肉体労働系に限っては、現在も裏の人材派遣市場において活況を呈しているようなのである−−。
嚆矢は、石油タンクの中に入って清掃するバイトだ。
「現在、最も有名な裏バイト伝説のひとつです。新宿や名古屋駅周辺、姫路などの駅頭でバイト斡旋業者に声をかけられると、だいたいこのバイトだといいます。真夏の炎天下でお揃いのつなぎを着せられ、爆発の危険のある石油タンクの中に入り、20cmくらい謎の洗剤の液体を張って、油まみれになりながらデッキブラシなどでゴシゴシタンク内を清掃する、という噂です。引火の危険があるため、日当は5万円。休憩時間には経営者から、ガ○ガリ君の差し入れが無造作に投げつけられる、というエピソードも聞いたことがあります」(都市伝説ライター談)
こんなバイトがあるの? そこで少し情報を整理してみよう。石油タンクってなんだったっけ?
「石油コンビナートとは、アラブなどから輸入した原油の集積企業体のこと。石油を始めとして原油精製過程に応じたさまざまな生成物質を、石油タンクのパイプラインを通して、それら物質を必要とするコンビナート敷地内の各業態の企業に送る施設と考えればいい。直接に生成物質を利用しなくても、生じた熱による発電を利用する企業なども周辺に集まっている。輸送距離が短ければ、それだけ安全だからです。同時に輸送の便と安全のため、必ず海の近くにある、そんな施設だと思ってもらえれば」(工場萌えライター)
このコングロマリットのような敷地内に鎮座している球体こそが、代表的な“石油タンク”と思えばいいのだろう。
実際に、このバイトは募集しているようだ!?
「これは、実際に募集しているバイトですよ。清掃のやり方は、まず別タンクへの配管を敷設してタンク内の原油を抜きます。コールタールが石油タンク内に溜まっているので、それを人間がスコップで取り除くのです。ある財界関係の方のブログによれば、この配管を間違えて、バルブが破裂、数10m原油が吹き上がり、当時バイトをしていた氏の目の前をバルブの破片がかすめたといいます」(実話ライター)
人は入れるのか。
「入口は、50cmくらいの穴だそうです。姫路の駅頭ではそんな細身の人をスカウトするのではないですか? 中のガスはすぐに引火しますから、スコップは火花が散らないようにコーティングするといいます。そうしないと、爆発しますから…」(同)
なんとも恐ろしい話である。現在も、このような危険なバイトはあるのだろうか。ひとついえそうなのは、この恐ろしいバイト話が都市伝説としての輝きを失うことはなさそうだ、ということである。