本人役で出演したグンソクは、A.N.JELLと一緒に写真撮影に臨む。美男とベタベタするグンソクに対し、美男以外のA.N.JELLの面々は面白くない表情をする。
韓国オリジナル版で廉に相当するファン・テギョンを演じ、強烈な印象を残したグンソクをリメイク版に出演させることは大きな話題づくりになるが、作品そのものにとっては冒険である。グンソクによって廉のイケメンぶりが霞んでしまう危険があるためである。
実際、グンソクの登場シーンはグンソクに美男、その他大勢という構図になった。これはイケメン揃いのA.N.JELLの中でもひときわ輝く廉のキャラクター設定にはマイナスになる。
しかし、廉の反応を柊や本郷勇気(八乙女光)と同じにすることは廉の存在感を埋没させる一方で、A.N.JELLの一体感を描く効果がある。韓国版では美男に相当するコ・ミナム(パク・シネ)以外のA.N.JELLのメンバーは子どもの頃から一緒に活動しており、気心の知れた仲であった。韓国版ではエピソードの端々で活動歴が長いことを描いてきた。その積み重ねがあるからこそ、ミナムをめぐる恋の争いが勃発して険悪なムードが漂っても、グループ崩壊というような決定的なところには至らなかった。
これに対して日本版は美男加入以前のA.N.JELLの歴史への言及が少ない。A.N.JELLの面々が韓国版以上に恋に積極的であることもあり、メンバーの仲の良さよりも対立が強調されがちである。日本版は韓国版よりも放送回数が少ない以上、細かなエピソードの省略は仕方のないことである。
その代わりにグンソクという圧倒的なスターを対置させることで、A.N.JELLの一体感を示した。それは中盤の柊を傷つけるNANA(小嶋陽菜)の言動への「A.N.JELLは俺が守る」という廉のセリフにつながる。グンソクの出演は単なる話題作りに終わらない味のある内容になった。
(林田力)