「これから本人と会って、編成本部長と話し合ってから決めたい」
“その質問”を予期していたのだろう。ジータ氏は言葉を濁している。
ジータ氏が直接会うと言っているのは、イチローのこと。来季も契約するか否かの選択権はマーリンズ側が持っている。シーズン中も伝えられていたが、来季44歳となるイチローが残留する可能性は「低い」というのだ。
「イチローは控え外野手としてスタートし、主に代打として貢献してきました。イチローの今季の打撃成績ですが、OPS(出塁率プラス長打率)の数値はリーグ平均以下。残留かどうかは他選手との兼ね合いもありますが、抜本的なチーム改革をするのであれば、ベテランは解雇していくと思われます」(米国人ライター)
リーグを代表するスラッガーのジャンカルロ・スタントン、人気のマーセル・オズナなども“放出要員”だという。昨季はシーズン終了とほぼ同時にイチローの残留が発表された。ジータ氏が言葉を濁した今回の対応とは対照的なだけに、現時点ではマーリンズ残留の可能性はやはり低いと見るべきだろう。
こうした状況に迅速な対応を見せたのが、古巣・日本のオリックスだ。
「オリックスの準本拠地・ほっともっとフィールド神戸には屋根がないため、本拠地を『京セラドーム大阪』に一本化する計画があるんです。昨年からフロント幹部をアメリカに派遣し、各球場の視察を行っています」(在阪記者)
その一行がマーリンズの本拠地を訪ねたときのことだ。イチローが自ら駆け寄り、彼らを労ったそうだ。「定期的に連絡も取り合っている」(前出・同)とのことで、マーリンズとの交渉が難航すれば、オリックスが好条件を提示するのは間違いないだろう。
「マリナーズ時代のチームメイトだった長谷川滋利氏は、オリックスのシニアアドバイザーを務めています。イチローの新人時代に教育係を務めた編成担当職員が今年から海外担当に異動しており、これはイチローとのネットワークを強化するためと見られています」(球界関係者)
イチローの日本球界復帰の話は、これまでも何回かあった。関西地区で活躍するプロ野球解説者によれば、イチローのエージェント会社が日本球界側との交渉を極端に避けていたという。しかし、マーリンズに移籍した2014年オフから柔軟になり、今ではこちらも定期的に連絡を取り合う関係になった。
前出の米国人ライターがこう予想する。
「マーリンズはいったん、イチローとの契約を見送り、FAにしてしまうのではないか、と。イチローは人気選手ですが、44歳のベテランと新たに契約を結ぶ米球団は現れにくい。頃合いを見て、マーリンズはメジャー最低年俸を提示して、イチロー側の返事を待つと思います。そうすれば、マイアミのファンにも言い訳がたちます。自分たちはイチローを残そうと思ったが、本人が他球団を選択した、と」
今季のイチローの年俸は200万ドル(約2億2000万円)。「4番目の外野手」に200万ドルは出せないが、54万ドル(=メジャー最低年俸)は出せるというわけか…。
今のイチローには往年のスピードはない。動体視力も落ちたとされるが、バットコントロールは健在だ。日本球界復帰となれば、京セラドーム大阪は満員となり、約2億2000万円の年俸もすぐに回収できるだろう。「メジャーリーグへの強いこだわりがある」との声も聞かれたが、オリックスが築き上げたイチローとの信頼関係が再クローズアップされそうだ。