アダルトゲームの審査済みマークには丸いシールと長方形型シールの二種類がある。前者はコンピューターソフトウェア倫理審査機構(通称ソフ倫)、後者はメディア倫理審査委員会(通常メディ倫)が審査を担当している。この二つの団体、一体何が違うのだろうか?
元々アダルトゲームを審査は、1992年に設立されたソフ倫が独占的に行っていた。ソフ倫は91年に京都府の男子中学生が、成人向けゲーム『沙織』を万引きするという事件から、有害なソフトが子供に悪影響を及ぼしたとして、発売元が摘発されるまで発展した“沙織事件”に端を発し、それまでメーカーの自主性による極めて自由なものだった表現規制を統一。これ以上、行政指導などで政府や地方自治帯の介入が及ばないようにと、設立された団体だ。それに対してメディ倫は、アダルトビデオ業界で流通革命を起こし、業界を席巻していたセルビデオメーカー、「ソフト・オン・デマンド」などが中心となって設立した団体である。03年からアダルトゲームの審査にも参入し、それまでのソフ倫独占体制を崩す形となった。
メディ倫はそれまでソフ倫がピー音を被せていた用語をそのまま使用できるようにしたり、使用そのものが禁止されていた言葉が使用可能になるなどの規制緩和を行った。局部のモザイク範囲などにも差があり、メディ倫ではアンダーへアーや肛門がモザイク範囲に入っていない。アダルトビデオの業界ではこの規制緩和が絶大な支持を受け、それまで審査を独占的に担当していた日本ビデオ倫理協会の牙城を崩し、加盟社数、市場規模でも上回るに至ったが、アダルトゲームではこの辺のパーツにあまり関心がないためか、それよりもストーリーやキャラの魅力などが重視されているゲームが多い影響なのか、メディ倫がソフ倫を圧倒するようなことは今のところない。
アダルトゲームは架空のキャラを扱う都合上、作品中の設定規制も存在する。近親相姦描写もその一つで、ソフ倫では1親等以内の性的表現を許可している。最近アニメ化もされ、双子の兄妹の恋愛模様が話題を呼んだ『ヨスガノソラ』の原作ゲームはソフ倫で審査を受けたソフトだ。このゲームを設定そのままにメディ倫で発売することは不可能となっている。ちなみにメディ倫ではレイプなどの犯罪描写の規制が緩い。作品の世界観もアダルトゲームでは重視されるので、この規制内容違いはモザイク範囲より重要かもしれない。
この二つの団体は、法的拘束力のない自主規制団体なので、別に審査を通さなくてもアダルトゲームを発売することは可能だ。しかし、流通業者は原則としてこの二つの団体の審査を通さないソフトは扱っておらず、これらのマークがないソフトはショップでは販売できない。アダルトビデオ業界では現在多数の審査団体が乱立しており、モザイクや販売価格などで凌ぎを削っているが、これはDVD普及の為、大企業がアダルトメーカーに流通や資金を提供した事が大きな要因となったといわれている。それと比べるとアダルトゲームは市場規模が小さく、大きな変化もなく現在に至っている。最近ではこの市場規模の小ささが災いし、ポルノ規制を叫ぶ人権団体の標的にされることも多く、大きな規制緩和は望めないだろう。それでも03年にメディ倫が参入したことより、一律で規制される危険性が少なくなったのは幸いか。やはりソフト・オン・デマンドはどこのアダルト業界でも時代の革命児だといことなのかもしれない。(斎藤雅道)