日本人選手が引っ切り無しに米大リーグに挑戦し、人材難が叫ばれるプロ野球同様、ここのところ日本の格闘技市場も深刻な局面に立たされている。某格闘プロモーターが現況を嘆く。
「いま日本の格闘技界はとりあえず石井(慧)がUFCではなく、日本でデビューすることになってひと安心といったところでしょうが、日本人選手のUFC入りっていうのは、いずれにせよこの先も向き合っていかなければならない問題。UFC志向の日本人選手はたくさんいますから。これ以上日本人選手がUFCに移るようでは、DREAMや戦極は人材難で興行的に厳しくなります」
2007年のPRIDE崩壊以降、闘う場所を失い、PRIDEを主戦場としていた有力選手が、次々に海を渡った。日本人選手のみならず、日本で育った外国人MMA選手アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラやヴァンダレイ・シウバなども、UFCに闘いの場を求め、人材流出は必然だった。だが最近のUFC移籍は事情が違うという。
「いままではPRIDE勢のUFC参戦でしたけど、今年はDREAMから秋山(成勲)のUFC挑戦、それに加えて宇野(薫)もUFCに再挑戦した。日本にとっては現時点で彼らがまだ結果を出していないのが唯一の救いですが、それこそ彼らが大きな結果を出せばその影響力は増すことになりますから、それが他の日本人選手の気持ちをUFCに向かわせないか気掛かりでなりません。それこそ秋山の活躍を見れば、石井だって触発されるでしょうしね」(前出プロモーター)
しかし、こうした状況下で風向きが変わってきているのも確か。最近になって石井がUFCデビューから戦極デビューを決め、UFCに参戦していたミルコ・クロコップがいきなり年内はDREAMで闘う意向を示唆。石井、ミルコともに「家族のために日本で試合する」とのことから日本での闘いを選んだ。前出プロモーターが言う。
「UFCは秋に日本興行を考えているので、日本人選手や日本で人気の選手を必要としていたようですが、こんな状況だとUFCの日本大会事態がどうなるかわからない。UFCのダナ・ホワイト社長=写真下=はミルコに『やり方が汚くないか』とマジギレしたそうだし。まあ、深読みすればこのミルコとUFCのやりとりは日本興行を打つためのアングルじゃないかって見方もできますけど…」(前出プロモーター)
スター選手の動向に揺れる格闘技界。今後も予断の許さない状況に変わりはない。