子どもに食や居場所を提供する「子ども食堂」が全国で増え続けており、昨年は1万カ所を突破した。これは公立中学校の数を上回っている。しかし、運営者の多くはNPO法人やボランティア団体などで、言うなれば善意で運営されている。
番組で取材した千葉市の「TSUGAnoわこども食堂」は月1回、無料で弁当を配布しており、持ち帰ることもできるため、人気スポットとなっている。食堂は月1回で150食提供、食材費は約10万円。そこが直面していたのは、物価高とコメ不足だ。夏休み期間中は子どもの利用も増えるため、食材調達に一層苦労するという。子ども食堂の運営には、住民や企業からの寄付が欠かせないが、物価高の影響で、寄付も以前のようにはいかない。
一昨年に発足した「こども家庭庁」の三原じゅん子担当大臣は、「地域こどもの生活支援強化事業として、1つの拠点に年間約300万円までの支援を行っている」と話すが、そうした補助金は制度の認知度が低いうえに申請手続きが複雑で、必要とする拠点に行き渡っていないのが現状だ。
東京・日野市のNPO法人「フードバンクTAMA」は、企業や個人から寄付された賞味期限が近い食品を、生活困窮者や子ども食堂に無償で提供している。理事の芝田晴一朗さんは9年前に活動を開始し、マルコメなど大手企業の協力を得て運営を続けている。芝田さんは「(配布の)優先順位は、ひとり親家庭。普通のものが食べられない。お菓子は基本的に買えない」と話す。
政府から放出された備蓄米も無償で提供されるようになったという。最近は冷凍食品の受け入れ態勢を強化し、提供できる食品を増やそうと奔走している。しかし、物価高の影響で食品の入手量が減少、食品の新たな協力企業を見つけようと奮闘している。
子どもの食卓を守るために、食品メーカーだけでなくメガバンクも動いている。東京・板橋区の銀行出張所を改装した「アトリエ・バンライ ITABASHI」は、三井住友フィナンシャルグループが運営する小学生向けの無料施設。学習や読書の場を提供したり、地域の団体が開催する子ども食堂に場所を無償で貸し出したりしている。
同グループは一昨年、「社会的価値の創造」を経営の中核に据えると発表した。そこには「貧困・格差の解消」も盛り込まれている。アトリエ・バンライはその一環だが、さまざまな企業とタッグを組み、子どもたちのための食育イベントも開催している。多くの取引先を持つ金融グループの強みが生かされている。
子どもの貧困の主な原因は、親の収入が不安定なこと(非正規雇用、失業、養育費の未払いなど)や、ひとり親世帯の増加などと言われる。その解決は、もはやNPOやボランティアの善意だけではむずかしくなっている。