オースティンは2021年シーズンはコロナで来日が遅れ、さらにオリンピックアメリカ代表として銀メダル獲得に献身するというコンディション作りの大変な状況ながらも107試合に出場。4打席だけ規定に足りなかったが、打率.303、28本塁打、74打点、OPSは1.006とフル出場ならタイトル奪取も確実な成績を残した。2021年12月に3年契約を締結したスラッガーは、打線のコアとして期待されていた。
しかし2022年の春季キャンプ中に右肘の故障が発覚し、4月に手術を決断。昨シーズンは結局スタメン出場を果たせず、代打起用のみで打率.156、ホームラン1、得点圏打率は.067と寂しい成績に終わってしまった。本人も帰国時に「非常に悔しいシーズンとなりました。シーズンを通じてチームに貢献することができず、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と無念さをにじませていた。
オースティンは「最短での復帰に向けて誠心誠意努力していきます」と誓ったが再度右肘にメスを入れたことで、来シーズンの開幕に間に合うか微妙な状況となってしまった。昨年ぽっかりと空いた穴は、楠本泰史、関根大気、蝦名達夫らの若手の台頭である程度埋めることができた。しかし相手に与えるプレッシャーや、クライマックスシリーズの3戦目の土壇場でのヒットなど、ここ一番での勝負強さはオースティンの真骨頂。スタートには間に合わないとしても、チームの勝利を愚直に追い求めるTAの存在は、優勝に向けて欠かせないピースとなる。
文・取材・写真 / 萩原孝弘