90年代にはセクシー女優自身が政治を志す動きがあり、1994年9月にAV新党が立ち上げられた。AVはアダルトビデオではなく、ABLE VOLUNTEERの略称であった。
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スローガンとして掲げられたものは「AVからモザイクを無くせ、政治からモザイクを無くせ」なるユニークなもの。今年亡くなったプロレスラーで政治家のアントニオ猪木さんが、1989年にスポーツ平和党から参議院議員選挙に出馬した際のキャッチフレーズ「国会に卍固め」を彷彿とさせるインパクトのあるフレーズだ。
AV新党は不透明な政治を「モザイク」になぞらえて、クリーンな政治をめざそうとしたのだろう。また、実際のアダルト作品でも「陰部のモザイク処理禁止」を掲げていた。「モザイクを無くせ」には二重の意味があったのだ。
さらに、当時はアダルト系のチャンネルが多く存在したダイヤルQ2での情報提供を行ったり、今よりお色気要素も強かった人気深夜番組『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)でも特集された。番組では、セクシー女優がTバック姿で政策を訴える場面などが放送されている。
ただ、AV新党は最終的には1995年の参議院議員選挙への候補者擁立は叶わなかった。この選挙では、格闘家の高田延彦氏などが出馬したさわやか新党や、日本世直し党、「開星論」のUFO党などミニ政党が多く林立した。AV新党も実際に出馬していれば大きな話題となっただろう。
AV新党の党首には人気セクシー女優だった井上あんりさんが務め、このほか林由美香さんなどが参加したが、井上さんは1996年に、林さんは2005年に亡くなっている。