ベイスターズからも7人の選手が非情宣告を受け、その中には8年目の外野手・山下幸輝の名前も含まれていた。
2015年はルーキーながら開幕一軍キップをつかみ、同期の倉本寿彦と共に開幕スタメンを果たすかと思われるほど評価され、2年目には62試合に出場。勝負強いバッティングとマルチポジションを守れる内野手として期待されていた。18年には5月31日の楽天イーグルス戦で、抑えの切り札・松井裕樹からサヨナラヒットを放ちお立ち台に登場。ヒーローインタビューでは、プロ野球史上でも一番の涙の量と思われる号泣で今でもベイスターズファンの語り草となっているが、19年は一度も一軍に上がることはなかった。
20年には髪を金髪に染め上げるなど心機一転し、ファームで結果を残すと一時期は代打の切り札的存在として活躍。弾ける笑顔、大きな声。打席で喜怒哀楽を前面に押し出し、ピッチャーと対峙する姿は大きなインパクトを残した。しかし直近2年間は思うような結果は残せず、今年は夏場からファームでも出場はなくなる状況だった。
山下は球団を通じて「今シーズン限りで引退することを決断いたしました。横浜DeNA ベイスターズに入団し8年間本当に熱いご声援ありがとうございました。ドラフト会議にて横浜DeNAベイスターズから指名された瞬間は今でも鮮明に覚えています。ファンの皆さまには直接ご挨拶できずに申し訳ない気持ちですが、本当に感謝しています。そして、何より最後まで自分をサポートしてくれた監督、コーチ、球団スタッフ、選手の皆には感謝してもしきれないです」と熱い気持ちをコメント。「これから先の事はまだ決まっていませんが、自分らしく新たな夢に向かって挑戦していきたいと思っていますので、温かく見守っていただけたらうれしい」とあいさつした。
三浦大輔監督も「悩んで悩んで出した結論。一軍でもガッツのある熱いプレーを見せてくれました。次の道でも幸輝らしく頑張ってくれたらなと思います」と第二の人生にエールを送った。
「代打で一軍で一年間!代打で一軍で一年間!」と念仏のように唱えながらティーバッティングを繰り返した秋季キャンプから早一年。その思いは遂げられなかったが、喜怒哀楽を思い切り表現する山下幸輝のプレースタイルは、ファンの心にいつまでも焼き付いている。
取材・文・写真/ 萩原孝弘