海外ニュースサイト『Reuters』や『Clean Energy Wire』によると、今年のドイツのエネルギーコストは、昨年に比べおよそ6割上がっているという。ガソリン価格も同様に2〜3割ほど上昇。エネルギーコスト上昇に伴い、家庭の電気代やガス代が家計をひっ迫していることはもちろんだが、パンやパスタ、植物油など日用品の物価の上昇も家計を苦しめる。
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現地に住むドイツ人は「物価は全体的に1.2〜1.5割ほど高くなったイメージ」だといい、ジワジワと上昇したというよりも「スーパーに行ったらいきなり上がっていた」という感覚だそうだ。一部のメーカーはホームページなどで値上げを公表しているが、「公表からすぐに値上がりしたように感じる。報道でも物価上昇は報じられていたが多くの商品が値上がりしたためどの商品が、と具体的に報じられることもなかった」と言う。一人暮らしならまだしも、家族の多い家庭では相当なダメージとなるだろう。ドイツではもともと節約上手な人が多いため、電気をこまめに消すなどエネルギーを節約する生活がすでに成り立っている。ここからさらに、というのは無理があるとも言えよう。
エネルギー価格高騰の背景には、ドイツが天然ガスや石炭、石油といったエネルギーの大半をロシアから輸入していたことが大きいだろう。ウクライナ侵攻に伴う経済制裁で、ロシア側からの天然ガスの供給が60パーセント減少した。それに加えてドイツは2011年に脱原発を決めており、よりエネルギー源を輸入に頼らなければならないという問題もある。原発の代わりとしてドイツでは太陽光発電や風力発電を強化してきたが、太陽光発電や風車が景観や自然を守るために建てられないなどの弊害もあり追いついていない。
生活水準が変わるといってもおかしくないほどエネルギー価格の高騰はドイツにとって深刻な問題だ。しかしドイツ人の反応は意外なものだ。ウクライナの現状を知れば、自分たちの価格の上昇はささいなことと受け入れ「もっと大変な人たちがいる。これくらいのことは我慢できる」「むしろもっとロシアに対して制裁をしてもいい」「今大切なことは、戦争に反対してやめさせること」という声が挙がっている。
一方で、「車で出かけることをほとんどやめた。少しは節約になったがいつまでも続けられないしこれからが心配」「例年、バカンスのために貯蓄をしているがそれが生活費に回っている。今年はバカンスに行けないだろう」「今年子どもが小学校に上がるが、このご時世で家計が苦しくカバンなど学校に必要なものは中古でそろえた」と本音を吐露する人も少なくはない。
ドイツの冬は厳しいが、ドイツ政府はエネルギー需要が増える冬場に十分なエネルギーを確保できない恐れがあるとして、既にエネルギー供給の緊急事態に備える警戒レベルを3段階のうち上から2番目まで引き上げると宣言している。状況はこれからさらに厳しくなるのだ。
政府は国民に一層の節約を求めているが、限界があるように感じざるを得ない。世論が今後変化していく可能性もあるだろう。
記事内の引用について
「German households feel the heat from rising power and gas bills」(Reuters)より
https://www.reuters.com/markets/commodities/german-households-feel-heat-rising-power-gas-bills-2022-01-04/
「German households pay 52 percent more for energy than a year ago」(Clean Energy Wire)より
https://www.cleanenergywire.org/news/german-households-pay-52-percent-more-energy-year-ago