前日まで「1勝1敗」の貴景勝はこの日、埼玉栄高校時代の1年後輩で今場所2連勝中の平幕・琴ノ若と対戦。立ち合い貴景勝は琴ノ若からもろ差しを狙われるも、両脇を締めながらの押しでこれを封じ少し距離ができる。この直後、貴景勝は琴ノ若の顔面に右フックのような強烈な張り手を食らわせた。
「バチンッ!」と大きく響いた音に観客からどよめきが起こる中、貴景勝は体勢を崩した琴ノ若をそのまま土俵外に押し出し勝利。ただ、貴景勝は琴ノ若の両足が出て勝敗が完全に決したにもかかわらず、なおも琴ノ若の胸を左腕で強く突くなどダメ押しのような動作も見せていた。
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この貴景勝の相撲内容を受け、ネット上には「今日の貴景勝、勝ったとはいえ取り口が荒すぎて不快だった」、「張り手は別に反則じゃないけど、大関が格下相手にやるのはみっともないな」、「張り手もそうだけど、その後のダメ押しも見苦しくて失望した」、「これまで張られ続けて怒りが溜まってたのか? それでも到底褒められた相撲じゃないが」といった批判が寄せられた。
「貴景勝は立ち合いから激しい突き押しで相手に圧力をかける相撲を持ち味とする力士ですが、自分から顔面を張りに行くことも、取組後のダメ押しも過去にあまり見せたことがないため、現地やネット上のファンは騒然としているようです。では今回なぜ荒い取り口となったのか。貴景勝は琴ノ若と過去3回(2021年9月・勝利、2022年3月・勝利、同年5月・敗北)対戦し、その全てで琴ノ若から顔面張り手を見舞われたのが関係したのでは。2022年3月の対戦では立ち合い張り手から変化を見せた琴ノ若に激怒したのか、取組後花道を下がる際に通路の金網フェンスを左手で1度強くたたき物議を醸しましたが、こうした鬱憤(うっぷん)が取り口に影響した可能性はあります。さらに、琴ノ若は今回の対戦まで対大関戦7連勝中でもあったため、貴景勝には大関として意地を見せなければならないという気持ちもあったのではないでしょうか」(相撲ライター)
取組後の報道によると、今回の一番については「あまり覚えていない」と詳細は語らなかったという貴景勝。ただ、心の中に秘めた思いがあった可能性はゼロではなさそうだ。
文 / 柴田雅人