しんいちは、松竹芸能で芸人デビュー。1年半の活動後に退社して、2年半ほど休業。再び芸人生活をスタートさせて、現在のグレープカンパニーに約8年半籍を置く。この実情をR-1主催局である関西テレビの担当者に打ち明けると、休止期間を差し引くとラストイヤーに該当すると認定された。そもそもR-1事務局のルールブックに、「活動休止期間は含めない」とある。
そこで、ZAZYは再調査。すると、しんいちは確かに2年半ほど事務所に入っていないが、ネタは作っていた。少なからずお笑い業界に関わっていたため、フリーターの一般人で、フリーランスの芸人でもあった。
>>吉本芸人以外は不利? 苦境に立たされる『R-1』王者<<
この微妙なグラデーションを賞レースで優位に働かせたのは、しんいちが初めてではない。ちょうど20年前、漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2002」でも疑惑があった。
02年は、ますだおかだ(増田英彦、岡田圭右)が優勝。前年(01年)の初代王者は、中川家(剛、礼二)。M-1には、結成10年以内というルールがある(15年から芸歴15年以内に改定)。中川家はラストイヤーだったが、剛いわく「ますおかは先輩」だったという。
公式プロフィールでは、中川家が92年、ますおかは93年に結成。しかし、結成と舞台デビューは違う。さらに、本人と事務所間で活動開始の解釈に隔たりがあることも珍しくない。しんいちと同じく、休業期間を差し引く配慮、自己申告がない場合は、通算キャリアでカウントされる。実際はどうなのか。お笑い通のエンタメライターに話を聞いた。
「公式キャリアでは不正がないと思われます。増田さんは大学を出て、就職してから芸人に。岡田さんは短大卒業後に就職して芸人になり、松竹養成所時代に結成しました。一方、本当の兄弟である中川家は、高卒で吉本興業の養成所に入っています。厳密なステージデビュー日、組んだ日を考えると、剛さんのなかで先輩という解釈・記憶になっているのでしょう」
しんいち対ZAZYと違い、20年間見過ごされてきた大物漫才師による“M-1グレーゾーン”。卓越した漫才テクニックをもってすれば、疑惑さえ吹き飛ばす!?
(伊藤由華)