6番セカンドでスタメン出場した牧は2回、ベイスターズが苦手とするタイガース先発・伊藤将司からライトフェンス直撃のツーベースを放つと、3回には右中間に豪快な3ランホームラン。4回には2アウト満塁、フルカウントからセンター前に弾き返し5打点目をマークした。残るはスリーベースのみとなった6回は初球を打ち上げキャッチャーファールフライとしたが、最終回のラストチャンスにライト深めのライン際、同じルーキーの佐藤輝明の前にしぶとく落とし、悠々と三塁に到着。祝福の花束が送られ、球場中から温かい拍手が巻き起こった。
ヒーローインタビューでは「チームが勝ってすごいうれしい」と第一声。「個人としてもこういう名誉のあることができたので、すごいいい試合だったと思います。チームメイトの方々に『こういうことはそんなにないから狙っていけ!』と言われた。結果が三塁打になってすごい良かったなと思います。ヒットを打つことをまず狙っていて、結果スリーベースになったらいいな、くらいの気持ちでいきました。記録として残ったので良かったです!」と声を弾ませた。
歴史をひも解くとチームでは大洋(洋松)時代を含め、8人目の偉業達成者となった牧。ブレイクダウンすると1950年にセ・リーグでは2人目の記録で、39歳まで現役、広島の監督も務めた門前真佐人氏を皮切りに、53年には“じゃじゃ馬”の愛称で親しまれ、野球殿堂入りしている青田昇氏が、61年には“天秤打法”で大洋のコーチも長く務めた近藤和彦氏、78年には82年の首位打者・長崎慶一氏が達成。横浜時代に入ると98年の優勝に貢献した“史上最強外国人”ロバート・リチャード・ローズ氏が95、97、99年と3回も記録。2002年にはボイ・ロドリゲス氏、DeNA時代では18年、今シーズン首位打者争いをしているリードオフマン・桑原将志が直近の達成者だ。
そうそうたる実績を残した先輩たちが達成し、NPBでも70人しか成し遂げていない大記録をマークした牧秀悟。軸のブレない打撃を武器に、この先もとてつもない記録を成し遂げてくれそうだ。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘