そんな中アピールに成功しているのが3年目の伊藤裕季也だ。エキシビションの初戦のホークス戦でスタメン出場し、レフトにタイムリー2ベースを放つと、2戦目は4番に入り1安打1打点。仙台に戦いの地を移した30日も1安打をマークすると、31日には2回にタイムリー、5回には「追い込まれていたので食らいついていった結果、本塁打になりうれしいです!」と崩されながらもレフトスタンドに運ぶソロホームランに満面の笑みを見せた。もちろん打撃がストロングポイントだが、サード、セカンド、ファーストと内野の守備もそつなくこなしており、ピンチのときにはいち早くピッチャーに声をかけに行くなど、立正大学時代に主将を務めたキャプテンシーでもアピールしている。
ルーキーイヤーの2019年は14試合に出場し、打率.288、ホームラン4本、OPS.929と上々の数字を残し、2年目の飛躍が期待された昨年だったが、出場はわずか5試合とほぼファームで過ごすシーズンに。さらにチームは去年のドラフトで牧秀悟を獲得。右のスラッガーでセカンドを守る存在に伊藤は「同じようなタイプを指名するということが、僕に対しての評価。このままではどんどん抜かれていくし、チャンスも減っていく」と危機感を募らせ「刺激になりますし、負けられない強い気持ちが自分の中で出てきた」と、ライバル心を燃やしていた。しかしオープン戦から結果を出せずに競争に敗れ、今シーズンはファームで8ホームランを放ちながらも打率は.212と低く、一度も一軍昇格はなかったが、異例のシーズン中のエキシビションマッチという千載一遇の好機に結果を出している。
4日からの函館遠征にも帯同することが発表された伊藤。残り5試合でさらに爪痕を残し、後半戦は一軍の戦力としての期待がかかる。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘