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本作は大阪の新世界を舞台に、若かりし頃、ヤクザの組を潰して回った勝吉こと村上勝太郎(赤井)と、その弟分であるコオロギこと神木雄司(上西)が、再びコンビを組んで恩人の娘を洗脳した宗教団体に立ち向かう様を人情味たっぷりに描くアクションドラマ。田中要次、菅田俊、小沢仁志、西岡德馬ら個性的なキャスト陣が脇を固める。
すでに2020年ニース国際映画祭で外国映画部門最優秀作品賞、最優秀脚本賞(上西)、2021年WICA(ワールド・インディペンデント・シネマ・アワード)で外国映画部門最優主演男優賞(赤井・上西)を受賞するなど、映画祭などでも高い評価を得ている。劇中、勝吉の恩人の娘で、宗教団体に入信してしまうヒロインの琴音を演じる有森也実に見どころなどを聞いて来た。
ーー『ねばぎば 新世界』はどんな映画なのですか。
有森:懐かしの任侠モノ、人が人を救う人情ドラマという感じの作品です。
ーー任侠ドラマで、すごく男臭そうな世界観。オファーをもらった時の印象を教えてください。
有森:オファーをもらったのは2年前で、まだコロナ禍になる前のことだったんですが、事前に上西さんが児童虐待を描いた『ひとくず』を見て、その後でこういう軽妙な仁義ものの作品を撮られると聞いて、上西さんに対して、多才で面白い人だなって印象を持っていたんです。だからオファーをもらってぜひやってみたいって思いました。
ーー任侠ドラマについてはどんな点に魅力を感じますか。
有森:人情ドラマがちゃんと描かれている点が魅力だと思います。筋を通す男が出て来て、自分以外の人を守る。今の価値観で見るとファンタジーのようにも思える設定やドラマが面白いと思います。
ーー本作では大阪の新世界が舞台。有森さんとはイメージが大きくかけ離れた場所という印象も受けるのですが。
有森:大阪のど真ん中で、雑多で面白い場所だと思っています。そこに生きる人もそれぞれ自由というイメージがあります。実はわたしはプライベートでは行ったことがないんですけど(笑)。撮影にあたっては「方言どうしますか?」って聞いたりもしたんです。でも、「いや、方言はいいですよ」って。
ーーこの作品は赤井さんの15年ぶりの主演作という点でも注目を集めています。
有森:赤井さんは撮影現場でも本当に素敵な人です。優しいし。例えば暴力シーンがあったとしても、愛を感じる人なんです。赤井さんから滲み出る個性もすごく素敵だなって思います。
ーー有森さんは90年代、トレンディドラマを中心に女優活動をされていました。当時のことを振り返ると、こういう人間味のある役柄、任侠ドラマのようなジャンルの作品への挑戦は何かギャップがありますか?
有森:当時はそういうドラマに出演しながら、たまらなく嫌になる瞬間もあったんです。ただ可愛くてニコッと笑っていればいいんでしょって。もっと違う役をやったり、いろんな自分を見せたいという欲求が常にありました。そういう感情が今の女優活動に繋がっているんじゃないかなって思っています。女優としては「あの役って有森也実だったの?」って言われる存在になりたいと思っているんです。その作品の中で生きるってことをきちんとやっていきたいなって。(挑戦する中で)一通りの役をやって来た気もするけど、おばあさんの役はまだやったことがないとか、これからもやったことのない役をやってみたいです。いい役でも悪い役でも挑戦してみたいなって。
ーーヒールを演じることも平気ですか?
有森:ヒールを演じる方が女優にとってはやりがいがあるんです。その役がヒールになる過程というのがちゃんとあるわけですから。そこをきちんと演じることが面白い。もちろん、ヒールを演じることでファンをがっかりさせちゃうかもしれないというのはありますけど(笑)。
ーー女優業をこんなにも長きに渡って続けるということを若い頃は想像されていましたか?
有森:いや、思っていませんでした。30歳くらいで家庭を持って子どもが欲しいってそんな風に考えていたんです。今はこうして女優として生きて来て、いろんな経験をできてよかったって思います。女優業を続けることで、作品の中でいろんな人生を生きることができた。これはこれでよかったなって思います。
ーー女優を続けて来て、刺激になる存在の人、有森さんにとって目標とする女優さんはいましたか。
有森:斉藤由貴ちゃんは常に意識していました。見る人を引き寄せる力がすごく強い女優さんで、自分も仕事をする中で、この役は斉藤由貴ちゃんだったらどんな風に演じるだろうって想像することがあったりもしました。得体の知れなさや冷たさ、面白さなどいろんな魅力を持った素晴らしい女優さんだと思います。
ーーコロナ禍での本作の公開については何か特別な思いがあったりしますか?
有森:映画の中で「ねばぎば(ネバーギブアップ)や!」って叫ぶシーンがあるんです。試写でそれを見たときに、今まさにこの映画こそ、みなさんに見ていただきたい映画だなって思いました。人が人を救う、人が人を頼る、そういうことが詰まった映画。若い人は未来に希望を持って生きることができるけど、わたしくらいの年代になると、先を見ることが重荷に感じたりすることもあるんです。そういう感情を共有することもできる、とてもいい作品だと思います。
ーーご自身はコロナ禍でどのような生活をされていたんですか。
有森:今回のコロナは自分たちが試されているなってことをすごく感じました。これだけコミュニケーションを制限されて、表現も制限されて、何かを試されている気が常にしていたんです。撮影するのだって離れて撮影しないといけない、マスクをしたまま待機してとか、作る側としてはすごく苦痛なことも多かったけど、そんな中でも、足枷をつけられてでもやる意味があるとか、仕事を続ける情熱があるということを再確認させられたりしたんです。自分を知る機会にもなりました。だから今はこういう状況も、前向きに捉えて生活をするようにしています。
ーー最後に改めてこの作品の見所を教えてください。
有森:上西さんは劇団も持っていて、役者マインドも持っていて、役者を生かすことが上手な人。役者が生き生きしていないと作品の活力は生まれない。赤井さんも素敵だし、上西さんも素敵、西岡さんも昔ヤンチャだったんだろうなって、想像させられるような味があった、そういった役者の活力や魅力をぜひ見て欲しいです。
(取材・文:名鹿祥史)
ヘアメイク:目崎陽子
『ねばぎば 新世界』
7月10日(土)より新宿K's cinemaほかにて公開中
赤井英和 上西雄大 田中要次菅田俊 有森也実 小沢仁志 西岡德馬
監督・脚本・プロデューサー:上西雄大
制作:10ANTS
配給:10ANTS 渋谷プロダクション
2020/JAPAN/Stereo/DCP/118min
公式サイト:http://nebagiba-shinsekai.com/
公式ツイッター:https://twitter.com/nebagibamovie