「初回の攻撃で大山悠輔内野手に今季1号のホームランが出て、4回には佐藤輝明選手もホームランを放ちました。チーム関係者は『大山と佐藤のアベック弾』を心待ちにしていたので、ようやく出たかという思いです」(在阪記者)
アベック弾となった佐藤の今季5号は、センターバックスクリーンに飛び込んだ。その飛距離と高い放物線に、ファンは見とれていた。主砲と期待の新人が打って、投手陣も好投――。こんな理想的なゲーム展開がされたのに、関係者の気持ちが晴れないのは「2008年の悲劇」があるからだ。
「その年、序盤戦から攻守ともに絶好調で、オールスター戦前にマジックナンバーが点灯しました。でも、その後、原巨人が息を吹き返し、最大13ゲーム差まで開いていたのに、逆転優勝されてしまいました」(前出・同)
阪神にとっては、思い出したくない黒歴史だろう。13ゲーム差を逆転された要因はいくつかあるが、当時を知る関係者、OBによれば、「主力の離脱」が痛かったと言う。
「4番の新井貴浩、クローザーの藤川球児、守備の要だった正捕手の矢野輝弘(現・燿大監督)をオリンピックメンバーとして引き抜かれてしまいました。巨人も上原浩治、阿部慎之助が代表入りしましたが…。代役の選手が活躍したのは巨人、阪神は主力の離脱がそのままマイナスとなりました」(OB)
北京夏季五輪の野球競技によるものだ。そういえば、今年もオリンピックイヤーである。現時点で、阪神では正捕手の梅野隆太郎の代表入りが有力視されており、「復活した藤浪晋太郎、大山、セットアッパーの岩貞、岩崎に稲葉代表監督が興味を示している」とのこと。全員、欠かすことのできないメンバーだ。阪神の関係者たちが“08年の悪夢”を重ねてしまうのも、当然か…。
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「投打の主力選手の好調な時期が重なっただけ。すでに、リーグワーストタイの11個のエラーが記録されています」
そんな冷静な意見を語るプロ野球解説者もいたが、元々、阪神というチームは細かい野球をしない。「打ってナンボ」であり、その豪快さを原動力としてきた。
そういえば、明日4月17日は「バックスクリーン3連発」の出たメモリアル・デーだ。東京ヤクルトとの対戦になるが、舞台は1985年と同じ甲子園球場である。ここで、大山と佐藤のアベック弾が出れば、悪夢の08年ではなく、優勝、日本一に輝いた85年を重ねて見る声も出てくるはずだ。
ちなみに、1964年の東京五輪イヤーを制したセ・リーグ球団は、阪神タイガースである。(スポーツライター・飯山満)