ニューヨーク・ヤンキースの条件提示が田中の希望額に届かず、その後、最有力先として浮上したのは、サンディエゴ・パドレスだった。しかし、1月18日(現地時間)、そのパドレスから「新たなトレードが成立した」との発表がされた。パイレーツから先発右腕のジョー・マスグローブ投手を獲得した、と。
「先発投手層がさらに厚くなりました。レイズのエースだったスネルを獲り、カブスからはダルビッシュ有もトレード補強しており、今季は強固な先発ローテーションが編成されます」(スポーツ紙記者)
新たな先発投手の獲得は、田中争奪戦からの撤退も意味する。この一報を受けて、米メディアはブルージェイズ、ツインズが獲得に乗り出すとも伝えていたが、「最も可能性が高いのは、楽天帰還」と捉えるようになった。
「田中は年俸1500万ドル(約15億6000万円)以上を希望しているようです。2020年の年俸は2300万ドル。試合数削減で全額は支払われていませんが、田中側の考えでは、減額を受け入れるということですが、メジャー各球団は新型コロナウイルス禍で、高額年俸の選手と交渉できるところは限られており、『1500万ドルでも高い』と解釈しています」(米国人ライター)
金額を抜きにして交渉できるのが、古巣・東北楽天ゴールデンイーグルスというわけだ。
「石井一久監督兼GMが田中獲得の意向を表明したのは、18日(日本時間)。この時点では、『リップサービス』と捉えた日本のメディアもありましたが、石井監督兼GMはパドレスがパイレーツとトレード交渉している情報を聞かされていたみたい。オンラインで田中の代理人に正式交渉の申込みをしたとも聞いています」(球界関係者)
>>楽天・石井監督兼GMがマー君復帰を狙う切実な理由三木谷オーナーの“イニエスタ級”大盤振る舞いはあるのか<<
ブルージェイズには前巨人の山口俊、そして、投手コーチは、04年に横浜ベイスターズに在籍したピート・ウォーカー氏がいる。NPBでの成績はパッとしないが、日本人投手のレベルの高さを認めている指導者の一人で、チームが菅野智之に続いて田中獲得を検討した背景に、ウォーカーの進言があったとされている。
「ツインズには同級生の前田健太もいます」(前出・スポーツ紙記者)
楽天の後輩たちも“意味シンな言動”を見せていた。
これまで田中の自主トレに同行してきた則本昂大投手が、今年から自身のグループを結成し、「これからは自分が教えていく」と発言(16日)。さらに、田中に学ぶことができたから今の自分があるとも力説していた。
「日本人メジャーリーガーがNPBに復帰する時、『都落ち』みたいな雰囲気になります。田中もそういうことを気にしているのかもしれません。則本が『田中のおかげ』と言ったのは、チーム全体で歓迎すると伝えたからでしょう」(前出・球界関係者)
前出の米国人ライターによれば、田中サイドの交渉優先順位はブルージェイズ、ツインズ、楽天。しかし、ヤンキースで先発枠を務めてきた実績に見合う年俸を出せるかどうかとなれば、悲観的な声の方が多い。だから、ブルージェイズ、ツインズ両球団から「日本人ルート」の話も出てくるのだろう。田中が折れて米球界残留となる可能性もあるが、楽天は着々と帰還準備を進めている。(スポーツライター・飯山満)