2020年、大谷の年俸は56万3500ドル(約6200万円)。メジャーリーグに挑戦した2018年は54万5000ドルだった。日本ハムでの最終年俸は2億7000万円なので、今は「超」の付く格安年俸である。
なぜ、こんな薄給になってしまったのか? それは、16年12月、メジャーリーグと同選手会の間で交わされた新労使協定により、25歳未満の海外選手と米球団が契約を結ぶ場合、「契約金」や年俸込みで「年間500万ドル程度に抑えなければならない」と決められたからだ。
「23歳未満だった年齢規定を『25歳』に引き上げたんです。当時22歳だった大谷のポスティングシステムに合わせたような変更でした」
当時、米国内にいた元特派員記者のコメントだ。
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ようやく、通常の契約更改がされることになったわけだが、もう一点押さえておかなければならない話がある。メジャーでの出場登録が3年以上6年未満の選手ならば、「年俸調停委員会」に自身の年俸が適切な額なのか否かを仲裁してもらうこともできる。大谷はその権利も取得した。
「大谷の代理人は21年年俸として330万ドル(約3億4300万円)を希望し、エンゼルスは250万ドル(約2億6000万円)を提示しました。双方に歩み寄りがなく、年俸調停委員会に持ち込まれることが決まりました」(米国人ライター)
米スポーツサイト「ジ・アスレチック」(1月17日付)によれば、エンゼルスの250万ドルについて、「打者・大谷」の指名打者(以下=DH)としての評価と分析していた。20年はDHで44試合に出場している。打率1割9分、本塁打7の成績からも分かる通り、大不振だった。
「打率2割8分台、打点60以上を稼いだ18、19年の成績も参考にし、球団は250万ドルとしました。20年の不振からすると、大甘な査定ですが」(前出・同)
大谷側は強気に出たのは、二刀流だからだ。他のDH選手とは異なり、「投手兼任の選手がクリーンアップを任されているんだ」と訴えたかったようだ。
80万ドル程度の違いなら、調停ではなく、話し合いでなんとかなりそうだが…。
「右肘の手術も癒え、万全な状態になれば、『10勝20本塁打』も夢ではありません。その時が来たら、大幅増は必至。新労使協定が対象外となって初めての年俸が330万ドルになるのか、250万ドルになるのか、今は小さな差でも、将来の年俸更改に大きな違いを生むことにもなりますので」(前出・同)
調停委員会では、大谷本人と代理人、エンゼルスのフロント職員が出席し、対峙することになる。委員会は3人の裁定人を立てる。しかし、近年の調停委員会では、双方がエキサイトしてしまうことも少なくないそうだ。
その調停委員会について、こんな指摘も聞かれた。
「裁定人が双方の中間額を見出すと伝えたメディアもありましたが、ナショナルズの元球団顧問で、アナリストのマット・スワルツ氏は『どちらか一方の言い分が採用される。折衷はない』と言い切っています。二刀流をどう評価されるのか、本当に分かりません。年俸調停がこんなに注目されるのも初めてなので、各米メディアも確認に追われています」(現地関係者)
注目される理由も、適正額が読み切れない理由も「二刀流」に尽きる。サンプルケースはないと言っていい。投打の両方で活躍したメジャーリーガーとなれば、1910年代のベーブ・ルースまで遡らなければならない。
調停は2月1日(現地時間)。大谷がエキサイトすることはないと思うが、球団とのこだわりは残してほしくない。「二刀流」にどんな裁定が下されるのだろうか。(スポーツライター・飯山満)
※大谷選手の年俸は「メジャーリーグ名鑑2020年」(廣済堂出版)を参考にいたしました。