ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ブーン監督がリモートによる会見に登場したのは、12月15日だった(現地時間)。主にオフの補強、その進展具合について語られ、「田中には残ってもらいたい。素晴らしいチームメイトであり、愛される存在だ」と訴えた。
この指揮官の言葉を受け、日本のメディアは「ヤンキースに残留」と解釈したが、米国ではそうは受け止めていなかった。「残留交渉が難行している、もしくは予定よりも遅れている」というのが、米メディアの見解だ。
米国人ライターがブーン監督のリモート会見をこう説明する。
「この会見の田中に関する内容を報じたのは、ごく一部でした。実は、ニューヨークの野球ファンの最大の関心は、今季、ア・リーグ首位打者に輝いたDJラメイヒュー内野手がヤンキースに残るかどうかで、田中の残留はその次。もちろん、田中には残ってもらいたいと思っていますが、ラメイヒューの残留を確実にしてから、田中との交渉に入るようです」
ラメイヒューは2019年1月に移籍してきた。本職は二塁だが、サード、ショートも守れ、今季は3割6分4厘で首位打者のタイトルを獲得した。ロッキーズ時代の16年にも同タイトルを獲得しているので、ア・リーグ、ナ・リーグの両方で首位打者を獲得した選手として、今オフの米FA市場の野手部門では、「注目の一人」と位置づけられていた。
交渉がラメイヒュー、田中の順番となるのは仕方ないとしても、それだけでは田中の残留が怪しいという根拠にはならないはず。
「ブーン監督の会見の数日前、ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMも取材に応じています。その時、ラメイヒューとの残留交渉については『最優先事項』と力強く語ったのに対し、田中のことを聞かれると、『選手会との規定で何も喋れない』と言っただけでした」(前出・同)
チームの編成責任者であるキャッシュマンGMのコメントも影響していたようだ。
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日本人メディアの解釈では、球団サイドが多くを語らない場合、「交渉の細部を詰めている」と捉える。米国ではその反対のようだ。
もっとも、田中本人を知る日本のプロ野球解説者にヤンキースとの残留交渉について聞いてみると、「ニューヨークでの生活が気に入っている」と言う。残留濃厚のようだが、直接確かめたわけでないようだ。
「ヤンキースの交渉の優先順位ですが、ラメイヒューの次は田中。でも、地元メディアはラメイヒューの次は外野手のブレット・ガードナーだと捉えています。ガードナーはヤンキース生え抜きのベテランで、けっこう人気があるので」(特派記者)
仮に田中が3番手だとしよう。1、2番手の選手と話を詰めている間に、他球団と先に話がまとまってしまう可能性もある。昨今、同じくニューヨークに本拠地を構えるメッツが「田中に興味を示している」との報道もあるそうだ。田中がヤンキースからの残留条件を聞いてから、他球団とも交渉するとしているのなら、結論が出るのは正月明けということになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)