そんなシーズンに小学校の副校長が電車内で刺され死亡するという事件が報じられたのは、1958年(昭和33年)3月18日のことであった。
この日の朝8時過ぎ、東京都内の国鉄(現JR)の電車内で、40歳の男性が何者かに右肩を短刀のようなもので刺され死亡するという事件があった。
刺された男性は、東京都都内のある小学校へ通う副校長で、電車内で高校生らしき男に「おはよう」と声を掛けられたと思ったら激痛が走り、近くにいた同僚に「背中を刺されたようだ。痛いから見てくれ」と傷口を確認してもらったところ、背中におびただしい量の出血が確認されたために病院へ直行。副校長の背中には刃渡り2.5センチほどのナイフで刺された跡があり、その傷口は腎臓あたりにまで達していたため、5時間後の13時ごろに息を引き取ったという。
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犯人は副校長に「おはよう」と声を掛けていたことから、顔なじみの人物もしくは教え子の一人なのではないかとされ、さらに制服を着ていたことが明らかになっているため、警察は近隣高校の生徒で怪しい人物はいないか調べた。
そして、副校長刺殺事件から3日が過ぎた3月21日、東京都八王子市の森の中で、18歳の男子高校生が首を吊って死んでいるのが発見された。
死体の近くには遺書らしきものが残されていて、「お母さんお父さん。済みません。副校長が亡くなったことを新聞で知りました。親孝行できなかったことをお許しください」と書かれていたほか、近くには刃渡り3センチほどの血のついたジャックナイフが残されており、警察はこの男子高校生が犯人であると断定した。
この男子高校生は小学生時代は、この副校長の教え子であったが、卒業後は特に連絡を取っていたような痕跡はなく、具体的な動機は不明。
また、この男子高校生は高校卒業を間近に控えながらも就職先がなく悩んでいたことがわかり、精神的に追い詰められていたようだった。
結果、本事件は具体的な殺害動機は明らかにならなかったが、大人しい高校生が衝動的な通り魔殺人を犯したということで当時、新聞報道でも大きく取り上げられた事件だったようだ。