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彼は既存の計画を踏襲しながら自身の設計を盛り込む形で建設に取り組んだが、完成には至らず今も建築工事が続けられている。完成しない理由としては、建築費用が集まらず、なかなか作業を進められないこと(現在も費用は寄付と観光収入でまかなっている)、細部に至るまで複雑な装飾を必要とするにもかかわらず、詳細な設計図がなく図面も存在しないことなどがある。
特に後者については、ガウディは詳細な設計図なしで、模型やスケッチでイメージを伝えていたのだが、ガウディが事故で急死してしまった上に、死後にスペイン内戦が起こったため、教会の建築に関する資料のほとんどが散逸してしまったのである。
ガウディの構想を再現することは不可能となってしまったため、工事を中断することも考えられたが、ガウディの残した資料や職人への口伝などをもとに、ガウディの設計構想を推測する形で建築を行うことになった。
当初は完成まで300年はかかると言われていたサグラダ・ファミリア教会だが、技術の進歩により工期は大幅に短縮。ガウディが亡くなって100年目の2026年にいよいよ完成するとみられていた。
しかし9月16日、2026年の完成は不可能と教会側から見解が発表されたのである。
理由はやはり新型コロナウイルス。今年3月になってスペイン政府が感染拡大を食い止めるために全国規模で都市封鎖を行ったため工事が中断された。また、建築費用の問題も大きいという。
前述の通り教会の建築費用は寄付と観光収入でまかなっている。新型コロナの関係でこれらの収益が大幅に減少してしまい、工事が再開しても作業を進められなくなったのだ。現在の費用では、聖母マリアにささげられる巨大な塔の工事を終えることしかできないという。
教会の建設委員長であるエステーバ・カンプス(Esteve Camps)氏によれば、「工事は数週間以内に再開される予定だが、新たな日程はまだ提案できない」とのこと。完成はいつになるのか気になるところだが、ガウディは生前こうも発言している。
「神は急いではいない」
そもそも当初は300年かかるといわれた完成までの期間があと数年後まで短くなったのだ。われわれももう少し待つ必要があるのかもしれない。
(山口敏太郎)