ベイスターズは2018年には石田健大、今永昇太、濱口遥大、東克樹の左腕カルテットでローテーションを形成するなど、左腕王国として名を馳せていた。昨年も今永がエースとして君臨し、濱口、先発中継ぎとフル回転した石田らが中心となっていたが、東が左ひじ故障で離脱。結果的にはトミージョン手術を受けることとなった辺りから、王国に暗雲が立ち込め始めた。
今シーズンもエース今永を中心に、濱口、石田に3年目の櫻井周斗、ルーキー・坂本が台頭し、左腕ローテーションは健在と思われた。しかし、櫻井は結果を残せず、チーム事情から石田は中継ぎとなり、開幕は今永、濱口、坂本の3人がローテーションに残った。その後、デビュー戦で坂本が見事に勝利したがその試合で足をくじき登録を抹消され、8月半ばには今永までもが左肩違和感でまさかの離脱。残ったのは濱口一人となってしまった。
「思ったより時間がかかった」と本人も振り返るように、坂本が復帰したのは約2か月半後の9月8日。久々の横浜スタジアムでのマウンドは、生命線のコントロールがイマイチで5回7失点と厳しい内容。しかし、味方打線の奮闘で引き分けとなり、黒星は付かなかった。プロとして重要な“負けない運”を味方に付け、次戦は9月15日人生初の神宮での登板となり、2回に2失点を喫したものの、3回からは立ち直り、打たせて取るピッチングで6回途中まで粘り、見事2勝目を手にした。
12日に久し振りとなる4勝目を挙げた濱口と坂本がローテーションの核になり、今はエース今永の復帰を待つ。来年には「憧れでずっと背中を追いかけていた」立命館大学の先輩・東克樹らと共に再び左腕王国を築く為にも、坂本にはルーキーイヤーにしっかりと爪痕を残してもらいたい。
取材・文・写真 / 萩原孝弘