この日、番組では現役時代の金本氏が試合中に死球で左手首を骨折するも、翌日に右手一本でヒットを放った2004年7月29、30日の試合を当時のラジオ実況と共に紹介。その話の流れで、濱中氏は2006年にあった金本氏とのエピソードを明かした。
2006年シーズンで最終的に規定打席到達を果たした濱中氏。到達時点では打率も3割に乗せていたが、残り10試合となったあたりで結果次第では3割を割り込む可能性が出てきたという。
既に規定打席に到達している打者が3割を割り込む可能性がある場合、本人の意向や首脳陣の配慮で残り試合を欠場して3割を維持するというケースは珍しくない。実際に濱中氏もコーチから「どうする?」と意向を聞かれていたという。
しかし、当時阪神で同僚だった金本氏は、濱中氏に「ハマ(濱中氏の愛称)、お前はそういうふうに(休む選手に)絶対なるなよ」、「俺はそういう打者は3割打者として認めない。最後まで出続けて3割を打てよ」と言葉をかけてきたとのこと。これを受けた濱中氏は、休まずに試合に出続けることを決意したという。
最終的に打率「.302」と、3割以上を維持したままシーズンを終えた濱中氏。「最後まで出続けて(3割を)やったというのは自分にとってプラスになった。(金本氏には)言っていただいて感謝しています」と語っていた。
今回の放送を受け、ネット上には「連続フルイニング出場の世界記録を持つ金本が言うと説得力が凄いな」、「金本の言葉通りに休まず出て3割維持した濱中も凄いよ」、「何で金本は休むなって言ったんだろうか、濱中がそれまで休みがちだったっていうのも関係してるのか?」、「楽な方に逃げずに苦しさを乗り越えろっていう根性論的な意味合いもありそう」といった反応があった。
現役時代に阪神(1997-2007)、オリックス(2008-2010)、ヤクルト(2011)で活躍した41歳の濱中氏と、広島(1992-2002)、阪神(2003-2012)でプレーした52歳の金本氏。両者は2003年から2007年にかけて共に阪神でプレーしている。
「現役時代の金本氏は多少の怪我でも休まずに試合に出続けた選手として知られ、NPB歴代3位の1766試合連続出場、MLBを合わせても歴代トップの1492試合連続フルイニング出場といった記録を樹立しています。一方、濱中氏はたび重なる故障で同年まで満足なシーズンを送れていませんでしたが、もしかしたら金本氏には“ここまで離脱せずにきたシーズンを最後まで戦い抜いて自信をつけてほしい”という親心のようなものもあったのかもしれません」(野球ライター)
翌年以降は再び故障や打撃不振に見舞われた濱中氏。それだけに、同年の最終盤に金本氏からかけられた言葉は今も強く印象に残っているようだ。
文 / 柴田雅人