プロ野球各球団は6月19日の開幕戦に向け、同2日から14日まで練習試合を行う。巨人・原辰徳監督によるオンライン取材によれば、16日にも千葉ロッテと練習試合を組んだという。「実戦感覚を取り戻すため、1試合でも多く」(スポーツ紙記者)と受け止められているが、同日に登板する投手がペナントレースのカギを握りそうだ。
「19日は金曜日です。一時期、19日の開幕戦が無理なら、同26日か7月3日と言われていました。すべて金曜日です。なぜ、金曜日からスタートさせたいかというと、3連戦をやって、月曜日に移動・休日を挟んで、火曜日からまた3連戦という流れを作りたいからです」(ベテラン記者)
球界には、月曜日が「移動・休日」なる慣習があり、それを崩さないことが選手の体調管理にもなるという意識からだ。
その慣習だが、こんな見方もできる。3連戦の初戦となる「金曜日」と「火曜日」に投げる投手が重要な役目を担う、と――。
19日金曜日の開幕戦はエース・菅野智之が投げるが、23日火曜日は誰が投げるのか? その1週間前の16日に千葉ロッテと練習試合を行うとなれば、同試合に先発するピッチャーが「菅野に次ぐ準エース」となる。大方の予想は、2年目の戸郷征翔だ。
戸郷は昨年、優勝の懸かった大一番がプロ初先発となった。その後のクライマックスシリーズ、日本シリーズでも“奮闘”したので、「2019年はよく頑張った」という印象だが、公式戦はまだ“8回3分の2”しか投げていない。つまり、2年目の今季は「新人王」の対象選手なのだ。
新人王は、ピッチャーなら一軍での投球回数が30イニング以内、バッターは60打席以内であれば、5年目まではその資格を有し、記者投票の対象となる。
「広島の新人・森下暢仁は即戦力と呼ばれています。佐々岡監督も先発ローテーション入りさせる予定でいるので、オープン戦を終えた時点で、『今年は森下』という予想がされていました」(前出・同)
戸郷が菅野に次ぐ準エースの重圧にも打ち勝てば、森下以上に評価されるだろう。もっとも、その戸郷の自主トレ、キャンプ、オープン戦での言動だが、“2年目の新人”とは思えないオトナの対応を見せていた。
話は3月10日のソフトバンク戦(オープン戦)に遡る。先発マウンドに立った戸郷は、ソフトバンク打線に捕まり、被安打9失点10で4回途中に降板した。前日は昨年の日本シリーズでノックアウトを食らった屈辱を晴らしたいとも語っていた。リベンジに失敗した後に出たセリフは、「直球がシュート回転し…」という反省の弁。このコメントに対し、大量失点を許してしまった敗因を冷静に分析しており、「2年目の高卒投手とは思えない」と称賛するプロ野球解説者も多かった。
先発投手のコマ不足というチーム事情もあるが、この戸郷が連覇のカギを握っている。本人は「今さら新人王?」の心境かもしれないが、「戸郷を勝たせてやりたい」と打線が奮起すれば、優勝争いでも広島を引き離すことができるだろう。(スポーツライター・飯山満)