メジャーリーグでは7月上旬のペナントレース開催を目指し、細部に渡った話し合いが続けられている。まだ全部が決定されていないが、一つの“変則ルール”の導入は間違いないという。今季、ナショナル・リーグもアメリカン・リーグと同じく、指名打者制(=DH)を導入し、調整が不十分なピッチャーの負担軽減を図るそうだ。
「その件に関しては、MLB機構、選手会双方が合意していると聞いています。断定形で報じている米メディアもあり、『来季以降も継続されていく可能性がある』とも伝えられています」(米国人ライター)
今さらだが、ア・リーグは指名打者制、ナ・リーグはそれを導入していない。日本のパ・リーグとセ・リーグのようなものだ。コリジョンルール、ビデオ判定のリクエストなど、米球界のルール改定は、日本のプロ野球にも後に大きな影響を与えてきた。「米球界で導入された新ルールが、翌年、日本球界でも」――。日本のセ・リーグもDH制導入が本格的に検討されるではないだろうか。
「そもそも、原監督がDH制の導入を提案したのは、パ・リーグに対抗するためです。ピッチャーが打席に立たなくなれば、打撃練習に費やしてきた時間も投球練習に充てることができ、レベルアップが図れます。DH制によって打線が強化されれば、乱打戦になっても打ち負けることがない、と」(プロ野球解説者)
原監督の提唱後、その是非を発言してきたのは、主にプロ野球解説者など。賛否両論があった。しかし、それらは「外野の意見」であり、セ・リーグの他球団監督など“当事者”から是非を聞くことはほとんどなかった。マイクを向けられた一部監督もいたが、発せられたコメントは当たり障りのないものだけだった。
「『意見を言ってはいけない』みたいな雰囲気がありました」(前出・同)
パ・リーグに対抗。近年、交流戦、日本シリーズともにセ・リーグは大敗を重ねてきた。原監督のDH制導入論の背景には、「パ強セ弱」の屈辱感がやはり大きい。
「原監督はスペシャリストを作る指揮官でもあります。第二期政権で活躍した代走の鈴木尚広氏がそうです。DH制導入後、守備、走塁を抜きにして、打撃面に専念させてみたい選手がチーム内にいるのでは」(ベテラン記者)
考えてみれば、日本の大学(東京六大学野球と関西学生野球は除く)、社会人野球はDH制なので、導入されたとしても大きな混乱は起きないだろう。日本も最速6月19日の開幕戦を実現させるため、水面下で各方面に働きかけている。試合数の激減による球団経営難は必至だが、「収入源を確保するため、来季以降のペナントレースの試合数を増やす案」も出ているそうだ。試合数が増えれば、ピッチャーの負担も増える。それを理由にセ・リーグもDH制導入を検討するのではないだろうか。原監督の存在感も増していきそうだ。(スポーツライター・飯山満)