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実名報道と匿名報道 人権意識の高まりで、実名公開に二の足踏む警察・報道

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沖縄の新聞が事件事故に関して紙面では実名報道を原則としながら、ネット記事では匿名報道をしているのはなぜかと疑問が寄せられた。

初めに沖縄の新聞社の事情についておさらい。沖縄本島には創業130年を超す老舗の琉球新報、戦後に創業した沖縄タイムスの2社がある。販売部数、売り上げが拮抗するライバル関係にあり、ともに共同通信の配信を受けている。取材、販売競争をする一方で、購読料金は同額、休刊日を同日にするなど談合ともいえる体質だ。

沖縄タイムスはコロナの持続化給付金の不正受給詐欺で逮捕された社員を匿名にしたことで批判をされ、下記のように釈明している。「インターネット上では、一度掲載すると情報が拡散されて長く掲載され、全てを消すことが困難です」

警察の逮捕で容疑者として実名で報じた後、不起訴や裁判で無罪になるケース、刑期満了後もネット上に長く残り続ける事で当事者が不利益や迷惑を被る恐れがあるともしている。この態度は、社員容疑者に対す態度としていかがなものかと疑問を感じる。

一方で例外として政治家や幹部公務員などの公的立場の人、有名人の事件事故、社会的に甚大な影響を及ぼすような殺人、連続強姦、放火、子どもが巻き込まれるような重大事件では実名で報道することもあると言い訳もしている。

ライバルの琉球新報の編成局長に見解を聞いたが、現時点で返答がなく社の方針を聞けなかった。代わりに事件事故報道経歴の長い部長級ベテラン記者に実情を聞くことができた。最近の傾向として警察の事件事故匿名広報が増えていることに一端があると答えている。このように警察が及び腰になっている理由は、逮捕検察送致後に釈放されるケースがあることを挙げ、また、刑事裁判まで行って無罪になった場合、被告とされた人が報道を取り消すよう求めてもネット報道は取り消しが困難で、消去不可能なデジタルタトゥーとなる恐れがあると話している。筆者が地元沖縄の記者をしていた20~30年前には、警察は交通事故や米軍関係で逮捕者が出た場合、実名でためらうことなく広報し、記者も疑問を持たず警察情報を記事化していた事を思い出す。デジタル化と人権意識の高まりで、時代に合わせて警察広報、マスコミ報道も変容してきたと言えそうだ。

取材・文/照屋健吉 リアルライブ編集部

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