「2020年オフの米球界を目指す日本人選手が何人かいました。米スカウトの間でもっとも評価が高いのは、巨人の菅野です。ソフトバンクの千賀を推す声も多く出ています。ただ、現時点で言えることは、彼らの評価は非常に高いですが、米球界挑戦を実現させるには、所属球団がポスティングシステムに掛けることを許可しなければなりません。そういう調査ができないので…」(ア・リーグ中部地区スカウト)
一連のウイルス禍のため、メジャーリーグでは一切のスカウティング活動も禁止されている。今オフ、ポスティングシステムなどを使って、米球界に挑戦するとされている日本人選手は、巨人・菅野智之、DeNA・山崎康晃、千葉ロッテ・石川歩、北海道日本ハム・有原航平、同・西川遥輝、ソフトバンク・千賀滉大など…。
スカウティング活動の禁止による“調査不足”以外の理由で、今オフの米球界挑戦は不可能となる可能性も出てきた。
その理由は、「カネ」だ。
「MLB機構は米選手会に改めて話し合いの場を求めています。すんなりと合意できないでしょう」(米国人ライター)
4月末時点で、MLB機構はアリゾナ州などウイルス感染者が比較的少ない3州に全30球団を集結させ、ペナントレースを開催する方向で調整を続けている。「無観客試合」となるのは避けられないが…。
「3月、MLB機構と選手会は“年俸の減額”でいったん合意しました。ペナントレース162試合、全てが行われた場合は満額、試合削減となった場合にそれに応じて減額していくという…。例えば、100試合しか行われなかったら、『年俸の162分の100』を払うことで合意しました」(前出・同)
ところが、である。この時点で、MLB機構や30球団のオーナーたちは、無観客試合になる可能性を“軽視”していた。無観客になれば、チケット収入は入ってこない。TV中継による放映権料のみとなるため、減額した年俸分も払えるかどうか怪しくなってきた。再度の話し合いが必要となった理由はこれに尽きるが、こんな情報も交錯している。
「興行収入の激減は、2020年オフの補強に大きく影響してきます。今オフ、契約満期を迎えるメジャーリーガーの再契約はもちろん、日本人選手との契約も厳しくなります」(プロ野球解説者)
選手会側はMLB機構、経営陣との再協議に難色を示しているという。選手会側はすでに今オフに契約満期を迎える選手たちが渋チン交渉になることも見据えている。さらなる減給に応じる見返りとして、「さまざまな交換条件も検討中」(前出・米国人ライター)とも伝えられているそうだ。
追い詰められているのは経営サイドであり、「今オフは、日本人選手との新たな契約にまで手を伸ばせないとの見方も強まっています」(同)
たとえ買い叩かれたとしても、メジャーリーグに行きたいと言う日本人選手も出てきそうだ。しかし、手放す日本の球団側も譲渡金(上限2000万ドル)をアテにしている部分もないわけではない。主力・看板選手を手放すのに見合った分を払ってもらわなければやっていけないだろう。
「順調に行けばの話ですが、来年7月~8月に延期された東京五輪を理由に、『米挑戦を先送りした』と言うかもしれません。東海岸の球団や大都市に本拠地を置く一部の球団は交渉できるかもしれませんが」(球界関係者)
収入減により、メジャー各球団は日本人メジャーリーガーの獲得交渉をする余力はない。菅野は「巨人愛」を貫くことになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)