3月24日夜、東京五輪組織委の森喜朗会長と武藤敏郎事務総長が会見を開き、東京五輪を延期させる方向性について説明した。その会見を受けてだが、球界の動きはかなり早かった。
「稲葉監督の任期? 続投。その方向で行くから」
同日、侍ジャパン強化委員会の委員長を務めるNPB・井原敦事務局長など、複数の幹部から稲葉篤紀監督の契約任期を延長させる発言が聞かれた。
「東京五輪組織委が会見を開き、延期の方向性を明確にしたのは午後9時過ぎ。NPBから稲葉監督の契約延長が出たのは、その約1時間後でした。こんな短時間で監督人事を決められるはずがない。五輪組織委は主要各競技団体に『五輪の延期』を伝えていたんでしょう」(ベテラン記者)
稲葉監督の契約任期は「2020年夏の東京五輪まで」だった。もっとも、当初の予定では、五輪の成績に関係なく、21年3月の第5回WBCは新監督で戦うとされていた。これで、稲葉監督は来年、WBCと五輪の両方を指揮することになった。金子誠ヘッドコーチ以下、全コーチも残留するという。その手際の良さからも、やはり延期の事前通達は間違いなさそうだが、12球団は“否定的な見解”を見せていた。
「WBCと五輪を同じ年にやるということは、選手の調整が難しすぎる。WBCに選出される選手は2月にトップレベルに持っていけるよう調整しなければならないのに、夏にもまた世界大会を戦うなんて、体力的に見て無理。特にピッチャーは…」(在京球団スタッフ)
「2月にトップレベル」に持っていく調整は、確かに難しい。WBCで好投した投手が同年のシーズン成績がイマイチという傾向は過去4大会で多く見られた。
そうなると、初春のWBCとオリンピックでは投手を総入れ換えするくらいの配慮が必要だろう。
「極論ですが、12球団にはWBCで世界一奪回の目標があります。オリンピックに野球競技を復活させたいとの目標もあります。でも、東京五輪の野球競技には6か国しか出場しません。予選大会には米国代表もエントリーしていますが、現役メジャーリーガーは出場しません。そうなると、自ずと優先順位はWBCが先となります」(球界関係者)
憶測の域を出ていないが、巨人・菅野智之が今オフ、ポスティングシステムを使って米球界に挑戦すると言われている。ヤクルト・山田哲人に関しても、同様のウワサが流れている。投打の戦力ダウンは必至。そう考えると、稲葉監督もよく、続投要請を引き受けたものだ…。
「菅野、山田に『待ってくれ』と泣きを入れることになるかも」(前出・同)
WBCと東京五輪、その優先順位が問われることになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)