「阪神から新型コロナウイルスの感染者が3人も出てしまい、その影響は12球団に広がっています。特に感染選手との“接触”があったとされる中日は、室内練習場の一時使用禁止を決めました(3月29、30日)。自宅待機となった選手が2人、他にナインとの別行動を要請された選手、スタッフが12人も出ました」(名古屋在住記者)
阪神・藤浪晋太郎の感染が判明したのは、3月26日夜だった。翌27日、阪神の谷本修副社長は緊急開催されたセ・リーグ理事会に出席し、事の経緯を他チームに説明している。迅速な対応に一定の評価もされていたが、プロ野球選手たちは“迷い”始めていた。
去る3月28日、マツダスタジアムでの全体練習後、主砲・鈴木誠也が記者団にこう打ち明けた。
「プロ野球だけ4月にやっていいのか…。そういう気持ちもある」
鈴木は藤浪と同学年でもある。藤浪を心配する気持ちも強く、また、東京五輪の開催延期や他スポーツが中止を次々と表明している中、プロ野球だけは「4月24日の開幕戦を目指して」と言い続けている(同時点)。
「鈴木だけではありません。會澤も『モチベーションが』と言い、練習を続けていることに罪悪感のような感情を抱いているようでした」(地元メディア)
NPBや経営陣も早期の開幕戦実現に固執しているわけではない。しかし、鈴木の言葉は広島だけではなく、大多数のプロ野球選手たちの気持ちを代弁したものかもしれない。
「選手会が動き出す前にNPBサイドが決断するかもしれません。2011年の東日本大震災の時、選手会が開幕戦の延期論を先に表明し、経営陣側がワルモノ扱いされてしまいました」(球界関係者)
確か、当時は日本ハム在籍だったダルビッシュ有が「野球どころではない」と口火を切り、避難所での厳しい生活を余儀なくされた人たちを思いやった。選手会も迅速に対応し、経営陣に開幕戦の延期を呼び掛けた。経営陣も頭では分かっていたが、広告出資した企業への説明などのオトナの対応があったため、完全に出遅れてしまった。
「鈴木は侍ジャパンの主砲となり、球界全体における影響も強い選手です。その鈴木が4月中の開幕に疑問を投げ掛けた以上、球界全体にその発言が広まっていくのは時間の問題でしょう」(前出・同)
この鈴木の発言が出る前の27日、打撃担当の朝山東洋コーチがピレラとメヒアの両外国人野手の一軍登録を示唆した。リリーバーで一軍登録を予定していたDJ・ジョンソンとフランスアの調子が上がって来ないためで、攻撃的な打線を組むプランを明かしていた。
ペナントレースに向けて練習することに疑問を呈する選手たち、まだ決まらない開幕戦に向けてチームの強化を考え続ける首脳陣。どちらも責任感から出た言葉だ。立場が異なれば、負う責任も違う。いずれにせよ、鈴木の発言は広がっていき、“決断のきっかけ”ともなりそうだ。(スポーツライター・飯山満)