まず、彼らから見て、最も不思議に感じるのは、育児において日本人は常に「100点」を目指そうとすることのようだ。離乳食は手作りにしたり、できるだけ子供との時間を増やそうとしたり、無理をして完璧を目指そうとしているように見えるという。
ドイツは100点どころか、50点くらいできていれば合格点という雰囲気があり、手を抜くところは目一杯抜く。母乳育児が大変だったら躊躇なくミルクに切り替えるし、離乳食は市販のものを使う人も多い。また、子供と常に一緒にいるのがいい親という意識はなく、むしろ、心に余裕がある方が子育てには重要だと思っており、子供をベビーシッターに預け、自分の時間を作ることもできる限りしているようだ。
「どんなに小さなスーパーでも、離乳食のコーナーが必ずあります。早くお酒が飲みたいという理由で卒乳する人もいますが、そんな話をしても、ドイツには“母親も楽をすることや息抜きが大事”という意識が強いようで、誰も白い目で見ませんね」(ドイツ在住・日本人)
また、日本人が夫婦で話し合って家事を分担することもドイツ人には不思議に映るという。日本では子供ができたら、家事を分担してできるだけ家事・育児をスムーズにこなそうとする人は多いが、ドイツでは家事を“分担”するという考えがあまりない。ドイツでは、夫婦はチームのように捉えている人が多く、1日のうちで出てくる家事・育児はやれる人がやり、最終的にうまく回ればいいと思っているのだ。
「子供を持つドイツ人夫婦に、『家事も育児も平等に分担するなんて無理があり、だからこそ分担を決めてもストレスを生むだけではないか』と言われた時はハッとしました。分担を決めないことで、『今、私は手が空いているからお皿を洗おう』など、思いやりが生まれることも多いと思います」(前出・同)
夫婦で助け合いながら家事・育児をこなすドイツ人だからこそ、母親と父親を区別しすぎる日本の文化も奇妙に感じるという。例えば、父親が子供に洋服を着せようとして言うことを聞かない場合、「ママの方がいいよね」と母親にバトンタッチする光景は日本ではよくある。だが、“母親だから”と言うはっきりとしない理由で母親に頼ることが、母親に押し付けているように見えると言う。
「ドイツ人にとって、親は親。ドイツでは母親だけではなく、母親の言うことも父親の言うこともきちんと聞く子に育てようと自然にしている人が多いです」(前出・同)
日本人がドイツの育児の仕方を取り入れると、少しだけ育児が楽になるかもしれない。