初回視聴率は19.1%(ビデオリサーチ調べ・関東地区平均)と順調な滑り出しを見せた。さらに、物語の舞台となる名古屋地区では20.6%(同/同地区)と大台突破も果たした。
前作である『いだてん:東京オリムピック噺』の低空飛行ぶりと比べれば好調とも言えるが、本作には多くの懸念要素がある。まず、初回視聴率はご祝儀相場と言うべきものである。ここからは当然ながら視聴率下落が予測され、どこまで歯止めをかけられるかが勝負だろう。また、『いだてん』は、複数のエピソードが混ざり合う、時系列が流れに沿っていないといった批判があったものの、これは言い換えれば、途中から観られる作品である。『麒麟がくる』は時系列に沿って進む大河ドラマの王道の構成を取ると見られ、この場合、一度離れた視聴者を取り戻すのは難しいと言えるだろう。
さらに、8月から9月にかけては、東京オリンピック、パラリンピックが開催される。これに伴い中継が入るため、すでに5週分の放送休止が発表されている。大河ドラマにとってヤマ場を迎えるシーズンに長期間の休止が挟まるのは、大きな痛手と言えるだろう。総集編などでどうフォローして行くかも、制作者の力が問われそうだ。
大河ドラマは、次年の作品が夏までにはクランクインする。2021年の作品『青天を衝け』は、新1万円札の肖像となる渋沢栄一を巡るストーリーであり、吉沢亮主演で、脚本を務めるのは『風のハルカ』『あさが来た』などで知られる大森美香である。現在の放送作の人気が落ちて行った場合、『いだてん』が『麒麟がくる』の話題に埋もれて行ったのと同じ現象が起きる可能性もある。
『麒麟がくる』のスタートは順調であったものの、試練が待っていると言えそうだ。