それに先駆け、原巨人のメンバーはキャンプ地・宮崎にそろって先乗りし、合同自主トレを行っている(1月28日から)。その光景を見て、ファンが口にしていたのが「狭間選手が多いなあ」との声。丸、炭谷、岩隈、中島…。キャンプが始まれば、ここに新外国人選手も加わる。だが、それ以上にファン、マスコミにとって印象深かったのは「やっぱり、阿部(慎之助=39)のチーム」ということ。捕手再コンバートを申し出たベテランはブルペンだけではなく、グラウンド全域を回って“睨み”を利かせていた。
「丸(佳浩=29)が打撃練習を始めると、ゲージの後ろに立ち、ずっと見ていました。終わると丸を引き止め、しばらく話し込んでいました。丸も阿部に話しかけられ、ようやく巨人の一員になったと思ったのでは」(スポーツ紙記者)
「阿部中心」のイメージは他球団選手も持っていた。阿部は捕手として投手陣から信頼され、4番も務めてきたので野手陣にも睨みが利く。投打の中核というわけだが、打撃練習、ブルペン、若手の守備練習など精力的にグラウンドを回り、他の選手に話しかける姿は「監督」そのものだ。
「ブルペンでは投手陣だけではなく、小林、炭谷とも何かを話していました」(前出・同)
練習後、阿部は「何を話していたのか?」と聞かれたが、はぐらかして答えなかった。阿部は原辰徳監督に自ら申し出て、今季から捕手に戻る。捕手は重労働であり、首やヒザなどに故障歴を持つベテランからすれば、再コンバートは得策ではない。それでも自ら申し出たことについて、
「慣れ親しんだポジションだから」
こう理由を説明し、自身の引退が近いことを示唆していた。「捕手として引退したい」というが、小林、炭谷らとレギュラーを争うのは並大抵のことではない。再コンバートによって、出場機会も減ってしまうだろう。
「阿部がベンチスタートとなる可能性は高い。原監督は阿部を近くに座らせ、作戦面で意見させるような場面も作っていくようです」(ベテラン記者)
合同自主トレで、ごく自然と“監督のような動き”ができるのだから、阿部は指導者向きでもある。原監督も阿部を認めているのだろう。しかし、こんな声も聞かれた。
「阿部もチームのまとめ役になるつもりですが、レギュラー争いから一線を引くような行動を続けていると、本当に老け込んでしまいます。チームのために動くのは大切なことだが、自分自身のため、もっとワガママに振る舞ってもいいのでは?」(球界関係者)
本当に怖いのは、“阿部ロス”。内海、長野といった看板選手をFAの人的補償で失い、その衝撃がいかに大きかったかは繰り返すまでもないだろう。内海は投手陣のまとめ役でもあった。長野も長くチームを牽引してきた。そのうえ、阿部が老け込んで「怪我で二軍調整」となったら、巨人は完全に崩壊してしまうだろう。
合同自主トレを見て、阿部の存在感を再認識させられた。だが、見方を変えれば、練習よりも後輩たちを指導する時間が長いというわけだ。阿部が故障せず、シーズンを通して一軍に帯同できるかどうかで、第三次原政権の結果も決まるようだ。(スポーツライター・飯山満)