信子の元彼である研作は信子の気持ちを取り戻そうと猛烈なアタックを繰り返す。太一にとっては恋敵であり、恋愛ドラマでは定番の主人公カップルの障害となる立ち位置である。しかし、これまでの研作はギャグキャラと化しており、主人公カップルが研作によって引き離される心配はなかった。
自分の意見に自信がない研作は、何でも検索しなければ気が済まない。ケータイ世代を戯画化したキャラクターである。その研作に太一が必要以上に対抗意識を燃やしており、研作の登場は主演カップルの促進材料になるという珍しい恋敵になっている。
ドラマの序盤では「リバウンドしたら別れる」と公言する太一との比較から、「太ったままでいい」と言う研作に優しさを感じ、信子には研作がお似合いとの視聴者の意見もあった。しかし、信子は研作に恋愛感情を抱いていない。付き合っていた頃に太っていた信子と手をつなごうとしなかったという身勝手さも明らかになる。
そして今回は信子が研作に対してブチ切れる。「いろいろ優しいこと言っているけど、結局あんたは自分の言いなりになる女が欲しいだけじゃない」と研作の本音を鋭く突く。自分の生き方は自分で考えて決めなければいけないのに、「何でもかんでも検索してんじゃないわよ」と研作の検索癖まで批判する。
信子にキレられた研作は思い切った行動に出る。まるで落雷に遭ったような変わりようであった。研作の行動はリアルにされたら、ドン引きされかねないものである。しかし、2006年日本アカデミー賞新人賞を受賞した『亡国のイージス』の如月行役など真面目な印象が強い勝地涼の存在感によって、研作の改心が表現されている。
研作はネットの検索情報に頼り、自分らしい生き方ができていない。これは自分らしい人生を模索する信子の内面的な課題に重なる。『リバウンド』はダイエットを導入部としながらも、人の生き方を描く人間ドラマとして制作されている。それ故に研作の精神的成長も、ドラマのテーマに沿っている。まだ今回の研作は自分の思い込みで突っ走っている。自分勝手な研作が相手のことを考えて行動するまで成長できるか見物である。
上質な恋愛ドラマは誰と誰が結ばれるか最後まで視聴者を裏切るものである。これに対して『リバウンド』では信子と太一がベストカップルであることは明らかである。低次元の口喧嘩もするが、ケーキ作りでは息のあったところを見せている。ところが、研作の大化けによって、信子と研作、太一と瞳という結末も否定できなくなった。最終回直前で予想をつかせなくした『リバウンド』の恋の結末に注目である。
(林田力)