風景や人物をそのまま写しとることのできるカメラという機器が発明されてから、わりと早くこの奇妙な写真は撮影されるようになった。当然ながらフェイクも多かったが、撮影状況などを振り返ると本当に幽霊が写ってしまったのでは?と思われるものが多数存在するのも事実だ。
今回紹介する写真は1891年にイギリスの図書館で撮影されたものだ。
光が差し込む部屋に置かれた一脚の上等な椅子に、うっすらと座っているような人影が被るように写っているのが判るだろうか? よく見ると白髪に豊かなひげをたくわえ、肘掛けに腕をおいている様子が見て取れる。
この人物は、写真が撮影された図書館を創立した人物、イギリス騎兵司令官であるコンバーメア(Combermere)卿ではないかとされている。彼はこの写真が撮影される前に馬車の事故で亡くなったという。
さて、この写真が公開された時、当然ながら二重露光などのトリックを疑う声も出た。卿が亡くなった後も多くの使用人が撮影現場となった屋敷で働いていたため、使用人が卿の服を着た状態で、カメラの露光中に椅子に座って心霊写真によく似たものを作り上げたのではないか、という説が唱えられたりもしたのだ。
しかし、当時の使用人で卿に扮することが出来るほど似た人物がおらず、似せることも難しいという反論が出てきている。
また、「この人物は本当に亡くなったコンバーメア卿の幽霊なのだろうか?」という疑問の声も出てきている。
卿の葬儀には多くの人が出席したのだが、この写真を見た人々から「生前、卿がこの幽霊と同じスーツを着用していたところを見たことがない」「亡くなった卿とあまり似ていない気がする」との証言が出てきているのだ。
果たして、この椅子に座っていた人物は誰だったのだろうか?
120年以上昔に撮影された心霊写真の真相は、未だに解明されていない。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所