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長嶋茂雄4880日視察ルポ 私が入手した「本当の病状」①

 ミスターの姿がどこにもない――。

“ミスタープロ野球”長嶋茂雄・巨人終身名誉監督(83)の緊急入院(昨年7月)からおよそ9カ月。ペナントレースが開幕する中、長嶋不在は野球ファンはおろか国民の気持ちに大きな影を落としている。

 長嶋が公の場に姿を見せたのは、昨年6月の東京ドームでの試合観戦が最後となっている。7月上旬に胆石の治療のために緊急入院し、昨年末に退院していることは周知の通りだが、以前のように外に出かけてリハビリをすることもなくなってしまった。

 例年であれば巨人の宮崎キャンプに駆け付け、「勝とう! 勝つ、勝つ、勝つ〜!」と拳を振り上げながら檄を飛ばすことが恒例となっていたが、今年は視察に訪れた山口寿一オーナーによるメッセージの代読のみ。

 2月20日の自身の誕生日をすぎ、3月になっても状況は変わっていない。脳梗塞で倒れた15年目の区切りの日となる3月4日(2004年)も動きは全くなく、3月7日に大阪で開かれた関西燦燦会の会合でも、やはり山口オーナーが登場し、ミスターの病状をこう明かしただけだった。

「胆石に関しては相当改善して、大きな手術とかは必要なくなった」。「入院がずいぶん長引いたので、さすがの長嶋さんも足腰が弱っている。リハビリが整ってくれば、東京ドームに来てもらえるものだと思っています。いつの時期になるか、今はハッキリしない」。

 この3月末に開催予定の燦燦会総会への出席も難しそうだが、4月に入れば公式戦を観戦する予定が入っているという。つまり、「病状は順調に回復しており、体力が戻れば大丈夫」ということだ。

 だが現状を見る限り、筆者はそこまで楽観視することができないでいる。特に気がかりなのは、昨年末に退院してから、一度も外出してのリハビリを行っていないという点だ。

 ミスターが脳梗塞で倒れて以降、筆者は4880日(3月20日時点)にわたってリハビリを追い続けてきた。雨の日も風の日も暑い日も雪の日も、必ず決まった時間に歩いてリハビリを止めようとしなかったミスターの壮絶な姿は、何度か本誌でもレポートした通りだ。最初は近所でのゆっくりとした散歩から始まり、徐々に強度を上げていく姿はまさに静かなる奇跡。都内の公園に出かけての早歩きや素振りを行うなど、順調な回復ぶりだった。

 ところが、昨年6月頃から遠出する回数が減り、近所の軽い散歩だけになるなどルーティンが崩れ始める。リハビリでも早歩きの最中に男性介護士の肩を借りたり、時折、ストップしてうずくまる姿を見せるようになったのもこの頃だ。

 最後にミスターの姿を見たのは昨年6月30日、都内の自然教育園での散歩で、翌日からはパッタリとリハビリは行われなくなってしまった。恥ずかしながら筆者が緊急入院を知ったのは『女性セブン』のスクープ記事だった。

 それでも気を取り直し、リハビリ先から入院中の病院に通い続けた。極秘入院だったこともあって、当初は危篤の情報も流れたが、筆者の取材の結論は「危篤ではない。元気だ」。長嶋家にごく近しい人物からも「長嶋さんは『外の空気を吸いたい。歩きたい』と言っています。必ず歩きますよ」と聞いていた。

 だからこそ、昨年末に退院した際にはすぐにリハビリの再開を確信し、12月14日の朝に東京・田園調布の長嶋宅を訪れた。

 だが、筆者の見立ては甘かった。長嶋宅前に立った私の姿を見て、長嶋さんの現役時代から専属運転手を務めているI氏が駆け寄ってきた。この前日、ミスターはI氏の運転するセンチュリーに乗って都内の病院から退院している。

 「退院おめでとうございます。よかったですね」

 筆者はI氏に笑顔で告げた。親しく言葉を交わすような関係ではないが、ミスターのリハビリ視察も、迷惑が掛からないように遠巻きに見ている筆者の顔は知っているはずだった。

 しかし、この日のI氏の表情はこわばったままで、怒りを抑えるような声で私にこう言い放った。

 「警察に通報しますよ! もうこの付近をウロウロしないでください」

 I氏の真剣な表情からは、現在のミスターが立ち向かっている状況の困難さが垣間見えるようだった。
(明日に続く)

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