7月29日にさいたまスーパーアリーナで行われる『RIZIN.11』で、五味隆典とアンディ・サワーが対戦することが発表された。多くのファンが見守る日本のリング上で、今度こそ五味は遠ざかっている白星をたぐり寄せることができるか。
■かつての姿を追い求めるファンも
日本復帰戦となった昨年の大晦日、対矢地祐介戦では1R2分36秒、三角締めで敗れた。大会前の記者会見からどこか歯切れの悪さを感じさせ、握手を拒否するなど不機嫌そうだった五味。試合でも開始直後に相手の蹴りが顔面に入るなど、矢地のペースが続いた。途中、グラウンドで上になりパウンドを繰り出したシーンでは感情むき出しの「五味らしさ」が発揮されるも、的確に対応する矢地に五味は頭部と右腕を捕らえられ、タップアウトに追い込まれた。
五味は相手の顔面を目がけて一直線に上から殴りにかかりながら、三角締めにも対応。何度も回避していただけに、もう少し冷静さがあれば結果は違ったものになっていたかもしれない。
ただし、五味に冷静さは無用か。
表情を崩さずとも燃えたぎる内面が丸見えの、五味のようなキャラクターは唯一無二であることは間違いない。そして「獲物」に襲いかかり、荒々しく仕留める獣のような獰猛さにわれわれは狂喜した。日本人の「強さの象徴」と捉えていたファンも多かったかもしれない。
■高い技術を持つベテラン同士、見どころは
対戦相手のサワーはシュートボクシングで圧倒的な強さを誇り、MMA転向後も高いパフォーマンスを見せている。五味自身、グラウンドでの展開について「寝技は(両者の能力は)五分かな」と警戒心を強めている。ともに経験値は豊富なだけにどのような攻防になるのかなど、さまざまな楽しみを秘めた試合とも言えるだろう。
五味はここまで、UFCでの戦いから数えて6連敗を喫している。最後の白星は3年前、KO勝ちとなると実に2012年UFCでの光岡英二戦にまでさかのぼらなければならない。五味自身も、さらには格闘技ファンも、やはり火の玉らしい「スカ勝ち」に飢えている。そして、一瞬で見ているものを熱狂に導く、あの戦いぶりにも。
若きスターに彩られ、華やかさを増してきた日本格闘技界。だが、見ている側に熱さや激しさが伝わっているだろうか。まだまだ多くの要素を求めてしまう。近い未来での引退を示唆しているものの、五味隆典のギラギラした眼差しはもう少しの間、リング上に必要な気がしてならない。(佐藤文孝)