これは東三河地方で、お爺さんやお婆さんが子供の頃よくやったコックリさんという占いの呪文である。コックリさんは、素人でもできるという交霊術による占いとして知られている。
昔、この地方では酷い病に罹ったり、困った事があると、コックリさん占いの先立達さんを家に呼び、どうしたらよいかを占っていた。この占いはよく的中し、医者が見離した病でも治ってしまったという。占い師が家に来ると、子供たちは襖の陰から覗いていたものであった。子供心に占いの儀式は不気味で恐ろしいものに見えたのである。
次第に、女学生の間でもこの占いが流行するようになった。女学生たちは学校から帰ると、神社の境内に集まって、ドキドキ、ワクワクしながら占いの準備をするのだ。まず、3本の箸の先を紐で結び、「はい」、「いいえ」と書かれた紙の上に箸を立てる。準備を終えると、みんなで心を一つにして一生懸命に呪文を唱える。すると、仲間の誰かがコックリさんに乗り移られ、箸をコツコツと動かして、合図する。
恋愛、結婚などの質問をすると、乗り移られた子が箸で答えを差す。
女学生たちは真剣で、時間が経つのも忘れ、辺りが暗くなるまで占いに夢中なる。コックリさんをやっていることは、家では秘密で、親にこのことがバレると、「管狐が取り憑くぞ」と、叱られるからだ。この遊びは流行していた地域とそうでない地域もあったという。
(「三州の河の住人」皆月 斜 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou