地下室、地下組織、デパ地下、昨今では地下アイドルなんて言葉もある。
“地下”の魅力とは何なのか?
埼玉県春日部市に「地下のパルテノン神殿」と呼ばれている場所がある。世界最大級の地下放水路『首都圏外郭放水路』がそれだ。
この施設は、あふれそうになった洪水を地下に取り込み、50mを貫く、総延長6.3kmのトンネルを通して、江戸川に排水する洪水防止施設である。埼玉にある中川と綾瀬川は地盤が低く、水が溜まりやすい地形の上、急激な都市化により、洪水被害を防ぐ河川整備や下水道整備が追いつかず、大雨のために浸水被害を繰り返してきた。
水害から守るために、世界に誇る最先端の土木技術を結集し、13年の年月を経て完成。自由の女神がすっぽり入る5つの「立坑」が洪水を取り込む働きをする。
今回見学したのは「調圧水槽」と呼ばれる、地下トンネルから流れてきた水の勢いを弱め、スムーズに流す巨大プール。神秘的な地下神殿は、映画『続・猿の惑星』のミュータントを思い出す。実際に、ここは映画やドラマの撮影場所としても使用されている。水が流れ込むとは想像しがたいが、貯水したであろう形跡は確かにある。
狭い国が故に日本は「地下」に無限の可能性を感じ利用してきた。町を救うためにつくられた、この地下神殿は人々のあふれる想いが結集されている。そこにロマンスがある。そこに地下の魅力がある。
目をつむると数万人のオタ芸が浮かぶ。いつの日か、この地下神殿で地下アイドルによるフェスが開かれ、巨大プールを彼らの汗と熱い想いで一杯にしてもらいたい。
地下へのソウゾウは無限に広がる。
(「はぐれ旅ライター純情派」海飛車鱗(うみとしゃりん)山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou