この大会は大正時代に開催されて以来、太平洋戦争中などを除き、毎年の恒例行事になっている。第1回大会が開催された1914年(大正3年)は第一次世界大戦が勃発した年であるが、国内では4月1日に宝塚少女歌劇(現在の宝塚歌劇団)が第1回公演を行い、10月1日に三越呉服店がエスカレータを備えて新装開店するなど大衆文化が花開いた。
菊花大会では約2000点の作品が東京菊花会ら団体別のブースに展示されている。展示種目は、大菊盆養(厚物、管物)、大菊切花、福助、だるま、江戸菊、 盆栽、懸崖、実用花、クッションマムなど様々である。実際、イソギンチャクのような形をしたものや、ポンポンダリアのような丸いものなどユニークな形のものもあった。近年は予算縮小で往時に比べると盛り上がりが欠けるが、それでも日本有数の菊花展であることには変わりない。
出品作品は愛情を込めて大切に育てられてきたことが想像できる力作ばかりであった。カラフルな菊の花は紅葉の始まりつつある公園の樹木や青空に囲まれて素敵なコントラストとなり、秋を体感することができる。日比谷公園周辺は官庁街であり、景観を圧迫するビル群がなければ都心とは思えない環境である。付近で働いている人ならば昼休みに見学するのも良い。会場では苗の販売や栽培方法の説明も行われていた。
林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)