「10-8」で同日の試合を制した侍ジャパンだが、先発の岸は6点リードの4回表に5失点を喫するなど「4回6失点・7安打」と炎上。ネット上のファンからは、「楽勝ムードだったのに何炎上してるんだ」、「明日もあるのに韓国打線を勢いづかせるなよ」、「これだけ打たれてるのに引っ張り続ける稲葉監督もおかしい」といった批判が噴出していた。
また、同日放送の『S☆1』(TBS系)にVTR出演した野村克也氏(元南海他)も「(インコースは)危険だね」、「キャッチャー(も)勘違いしてインコース攻めるのが強気だと思ってる」と岸、そしてバッテリーを組んだ會澤翼(広島)に苦言を呈していた。
『報道ステーション』のメインキャスターである富川悠太アナウンサーの質問に答える形で「前日(16日韓国戦)は岸投手が先発してくれたんですけど」と切り出した稲葉監督は、「岸投手から『インコース、どんどん攻めていった方がいいですか?』と(言われた)。韓国打線を抑えるというよりも、どんどんインコースを突いて次の試合、決勝戦に向けてやった方がいいですかということを岸投手から言ってくれたんです」と、大量失点を招いた岸の投球には、翌日の決勝戦へ向けて布石を打つ意味合いがあったことを告白。
続けて、「岸投手は自分の投球よりも、決勝戦にどうつなげるかということでどんどんインコースを攻めていってくれた」と、チームのためにあえて自分を犠牲にした岸へ感謝の思いを口にした。
また、番組に出演していた清水俊輔アナウンサーの「試合後の岸投手はそんなこと全然(言ってなかった)」という問いかけに対しても、「そこがまたいいところなんですよ」と一言。自身の投球に批判が集まっていたことを知っていたかどうかは不明だが、試合後も“黙して語らず”を貫いた岸の姿勢に最敬礼していた。
今回の放送を受け、ネット上のプロ野球ファンからは「チームのために自ら捨て石になるのは覚悟がすごい」、「稲葉監督も岸を信頼していたから途中降板させなかったんだな」、「何も知らないまま岸を批判してた自分が恥ずかしい」と称賛する声が続々と挙がっている。
「5-3」で勝利し優勝を果たした翌日の決勝戦では、先発・山口俊(巨人)が3失点を喫したものの、山口に代わって登板した6名の投手は全て無失点だった侍ジャパン。前日の試合で岸が見せた“男気”が、世界一の座を引き寄せたといっても過言ではないのかもしれない。
文 / 柴田雅人