18日、巨人・山口俊(32)がポスティングシステムによるメジャーリーグ挑戦を明らかにした。同制度を使って海を渡った選手は多いが、山口の場合はいくつか異なる点がある。まず、“予告”をしていない。15日、やはり球団を介して同制度の手続きを行ったDeNA・筒香は、前年の契約更改の会見で「米球界挑戦の気持ちを伝えた」と明かしている。過去に予告した選手もそうだが、チームに貢献し、そして、大団円で送り出されてもらう。
山口は最多勝を含む「投手タイトルの三冠王」に輝いており、成績優秀な点では過去の制度適用選手と同じだが、巨人選手としては第一号となる。松井秀喜、上原浩治の両氏が“強い残留要請”に苦しみ続けたのに、だ。
「16年オフ、FAで巨人との入団交渉に臨んだ際、将来のメジャー挑戦の希望も打ち明けていたそうです」
関係者の一人がそう明かす。しかし、その時点でも山口の希望を知っていたのは、ごく一部の幹部スタッフだけ。山口もチームメイトや球団職員に相談していなかったという。
「原辰徳監督(61)が相談という形で、山口から打ち明けられたのは今季後半だったと聞いています。ゴーサインを出すかどうか、最終的な判断も原監督に委ねられました」(前出・同)
フリーエージェント権を行使しての海外挑戦ではあるが、松井、上原の看板選手を見送ったのも原監督だ。松井の移籍当時を知る年長のスタッフによれば、原監督は「残ってくれ!」と最後まで訴えていたそうだ。
「指揮官とすれば、チームの勝ち頭のピッチャーを喪失するのは大打撃です。心境の変化というか、受け入れる気持ちになれたようです」(前出・同)
今となってみれば分かるが、原監督はFA交渉解禁に先駆け、「選手の権利」「人的補償の制度改革」など、移籍に関するルール変更の持論を明かしている。FA勝者だった巨人の立場からすれば、「人的補償をなくす」の意見は、喪失する側の球団のファンから共感を得られるものではなかったが、この時点で、山口喪失を認めていた。
美馬、鈴木のFA獲得にも失敗しており、ドラフト会議も「将来性」を重視した指名になった。現時点で巨人のオフは「補強」ではなく、「戦力の喪失」が続いている。
「投打ともに外国人選手を獲る予定ですが。トレードの話も聞こえてきます。山口の代わりか務まる大物を獲るとしたら、それ相応の選手を出さなければなりません」(スポーツ紙記者)
しかし、こんな見方もあるそうだ。
「次のポスティングシステムの適用者は、菅野智之(30)ですよ。山口の希望を原監督が認めたことで、菅野もメジャー挑戦の思いを表明しやすくなりました」(前出・同)
今さらだが、2人は伯父と甥の関係。グラウンドでは言えない話もあるだろう。若手育成にさらに本腰を入れれば、今オフの補強失敗と喪失にもファンは決して悲観的にならないだろう。(スポーツライター・飯山満)